ダーウィンを時代から読む
★★★☆☆
著者は動物行動学の専門家。同時に科学史に関する著述活動も行っている。
本書は、「集英社新書ヴィジュアル版」。多数のカラー写真を使い、豪華なつくりとなっている。
内容としては、ダーウィンの生涯を簡単に追いつつ、ゆかりの場所を訪ねてまわるというもの。パブリック・スクール時代、エディンバラ時代、ケンブリッジ時代、さらにビーグル号のところではガラパゴス諸島を訪れる。帰国後のダーウィンについても、丹念に住居を追っている。
進化論にまつわる科学的な本というよりは、社会史の側面からダーウィンをとらえた歴史的な本という印象。親戚のウェッジウッドの話、宗教と進化論、ダーウィンの属したミドルクラスという階級。ダーウィンを時代から読んだ伝記と位置づけられる。
ただ、欠点の多い本でもある。全体としてまとまりがない点、どの箇所もさらりと流されてしまって深く突っ込んでくれない点、写真がいまいちな点は不満が残る。
ダーウィンも辛かった
★★★★★
「進化論」の面倒くさい理論は一切書かれていないにもかかわらず、しっかりと「進化論」の入門書になっている好著!ダーウィンが生まれてから死ぬまで、どこで、何をしてきたか、まさに足跡を辿る旅、また旅の連続! 旅行好き、紀行文好きにはたまらない本。 随に散りばめられた著者のご主人が撮影した写真がこれまたいい。 それにしても、チャールズ・ダーウィンという稀有の天才の運命は、本人にとって、果たして幸せなものだったのだろうか? 最後まで考えさせられる。
ダーウィンの伝記風旅行エッセイ
★★★★☆
美しい英国やガラパゴスの写真がちりばめられた旅行記風エッセイだ.またダーウィンの簡単な伝記にもなっていてストーリー性も十分あり上品な本に仕上がっている.
デズモンドとムーアの大部な伝記「ダーウィン」,ランドル・ケインズの「ダーウィンと家族の絆」,グウェン・ラヴェラの「思い出のケンブリッジ」を読んだことのある人にはこたえられない新書である.これらを読んで一度行ってみたいなというダーウィンゆかりの土地を(南米の調査地を除いて)美しい写真で次々と案内され,その間に著者の楽しいエピソードがはさまる.(ダウンハウスで古い蔵書のにおいを嗅ぐところなど傑作なエピソード満載である)案内の地図も丁寧に挟まれ,何とか次に英国に行く機会があれば,いろいろなダーウィンゆかりの土地を訪ねたいと思わせる.ガラパゴスの風景と動物たちも紹介されていて,ここは珍しい動物相をみた著者の興奮が伝わってくる.
ダーウィンなり,英国に興味のある人にはお薦めの一冊だ.
ちょっとちぐはぐ・・・
★★★★☆
ダーウィンについて書きたいのか、著者の紀行エッセイなのか。
もちろん、両方を目指しているのはわかる。だが、それがどうもうまくかみ合っていない気がする。
例えば、ダーウィンの奥さんはピアノをショパンに習っていた、という文章の後に、「実は私もショパンを弾いて・・・」という文が入り、その後何事もなかったかのようにダーウィンの記述に戻る、という感じ。
ダーウィンの記述ばかりの項もあれば、著者の紀行ばかりのところもある。
なんというか、ちぐはぐな感じなのだ。
一話完結の連載をまとめたせいだと思うが、実力のある著者だけに、一冊にまとめるにあたりもうちょっと全体のバランスを取って欲しかった気がする。突然、脈絡なく夫の名前が出てきたりという編集上のちぐはぐさも気になった。
写真はきれいで、見ていて楽しい。