曲家・川井 憲次の代表作
★★★★☆
1998年に発表されたものであるが、今尚、作曲家・川井 憲次の代表作としてひときわ魅力を放ちつづける作品である。
内田 輝をコンサート・マスターとする50人程のストリング・セクションを基盤として、そのうえに、東京混声合唱団、及び、シンセサイザーを中心とした楽器群が演奏する神秘感と躍動感の溢れる楽曲がつづく。
Patlabor 2 the Movieは、押井 守が映画監督として成功を収めた最後の作品であるが、あらためて、こうして音楽だけをとりだして聴いてみると、映像音楽が独立した音楽として生命を得ていくためには、映画そのものが優れていることが実に重要であることを痛感させられる。
Wyvern・With Love・Outbreak・Hallucination等、作品のハイライトというべき楽曲を聴いていると、脳裏には作品中の緊張感溢れるシーンの数々が自然と思い浮かんでくる。
映画そのものが視聴者に強烈な印象を残すことができなければ、音楽を聴いて、こうした歓びを味わうことはできないだろう。
音がクリアすぎるが故に・・・
★★★★☆
劇場版「機動警察パトレイバー2」の5.1サラウンド版OST。
原曲が好きな自分にとっては少し合わないアレンジになってしまった感じがあります。
音の素材があまりにもクリアで美しい。生声のコーラスも魅力的なアレンジです。
ですが素材がクリアすぎるために、音と音の空間もクリアすぎて
綺麗過ぎの印象が来るのです。
あのオリジナルのかすかなノイズ(澱みともいう)の空間が消えてリアルさが増した分、
幻想的な曲の感じが薄れている。
そこが惜しいという感じです。
オリジナルCDには無い夜のドライブの曲、
そしてプレサウンドトラックからの曲が収録してあるので
CD自体はかなり御得な感じがあります。
川井節全開
★★★★★
オリジナル版にあった、チープなアナログ・シンセの響きを脱却すべく
生音に徹底して拘ったサウンド・リニューアル版である。
ボーナス・トラックとして、「プレ・サウンドトラック」の中の曲が
数曲入っているが、必要だったか、と思うと複雑な気持ちである。
何より音の感触が明らかに違うので、せっかく映像本編に沿って
曲が並んでいるのに違和感が増すだけ、なのだ。
これらの「プレ・サウンドトラック」からの数トラックは無論、リニューアルは
されていない。
リニューアル、とは言っても本版に限っていえば殆ど再録音で
あり、よくあるリマスタリングだけではないところがミソである。
従って奥行きや重厚感は勿論の事、リズムやテンポすらも
変更されていてかつて演奏されていなかった楽器の
音も挿入されている。
無論、オリジナル版の発表当時の録音技術やマスタリング技術では
到底望めなかった部分の発展であるから、これはもう
大歓迎である。
しかし、同時にオリジナル版の持つ音の感触も本版もそれぞれ魅力的であり
決して甲乙付け難い。結局、私は2枚とも購入した・・・。
何故なら、いつもの川井節が映画本編の進行に寄り添うように
いくつかの楽曲が、その映像に確かに彩りを添えているからである。
ロマンティックな「・・・with love」しかり、緊迫感タップリの「outbreak」しかり。
川井のエンディング・テーマにハズレなし、とはよく言われるが今回の「hallucination」
に至っては感動して思わず鳥肌がたった程。
事実上パトレイバー関係の3作目にあたる「WX3」については川井氏作品の
中では明らかに異色であり、一種の音響彫刻のようなそれはそれで
素晴らしいのだが、映像本編との成り立ちとしてはこちらに軍配か?
何より、どこを切っても金太郎飴じゃなかった川井節が全編
炸裂気味なのである。
そしてこれまたいつもの川井節満載のライナーも併せて必読もの
なのである。
やはりOPとEDがベストですが。
★★★★★
個人的には荒川の車中シーンで流れる音楽(夜のドライブにどうぞ:笑)
やプレ・サントラの曲が複数ボーナストラックとして入っているのが嬉しかった。
93年の分と両方買っても損はないです。
こちらには川井さんの明るい解説が入っていますが、
前になかったのは映画の重いムードを重視したんでしょうかね。
さりげないリニューアルも難しそうです。
地味だが聞き飽きない
★★★★★
押井守の傑作アニメ映画、1993年のオリジナルではなく、1998年に発売されたDVD用に再レコーディングされたサントラ。
オリジナルとの違いはコントラバスや女性コーラスがシンセの合成音から生音になったこと。このためオリジナルにあったいかにもシンセっぽい響きがあった部分がある程度解消され、深みを増しているのがわかる。
楽曲のほうはハードでリアリスティックな映画の内容にあわせ、本作も派手さがない重厚な作品にしあがっている。もともと本編自体が主題歌などをもたないことや、ストーリー展開上、特車2課自体が脇役であることなど、派手になりそうな部分はもともとない。
全編を覆うギリギリとした緊張感に満ちたサスペンス風のBGMの完成度は高い。いまだに報道番組のキナ臭い映像のバックに流されているのを耳にするほど・・。
なかでもベイブリッジ爆撃や山場の東京襲撃シーンで流される曲、自衛隊の治安部隊出動シーンに流される曲は印象的。ひたすら地味だが海底トンネルでの戦闘シーンで流される淡々とした曲も何度も聴くと味がでてくる。
唯一、南雲警部の恋愛を描く「ウィズラブ」がピアノソロを中心にし雰囲気を異にするが、その曲さえもところどころに弦楽器の神経を逆なでするような高音が流れを遮るようにさしはさまれるなど、本作に平安な曲はない(エンディングテーマも勝利や平和を表す曲調ではなく、自衛隊出動シーンで流されるテーマのアレンジになっているなど、漠然とした不安感、緊張感を保ったままでのラストになる)。
リビングでじっと聞くというよりも、クルマの中で流すと雰囲気がある。