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秘密〔ハヤカワ・ミステリ1833〕 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

価格: ¥1,890
カテゴリ: 新書
ブランド: 早川書房
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円熟の地平へ ★★★★☆
著名になることで得る名声、地位、お金が膨れ上がるほど、かってあった作品の豊かさが、反比例していく作家の多い中で、P・D・ジェイムズの『秘密』は創作することに年齢が(精神と肉体)挑戦できるという意味においてもすごいものだと証明している。
P・D・ジェイムズは重苦しく,取っ付き難いと評論されるが、建築物や風景に対する審美眼、そこに生きる人間関係の洞察は、P・D・ジェイムズの世界を様式化していて、その堅牢な土台の上にミステリーという謎ときが絡んでくるので、好奇心が触発されるので、明晰で、楽しい。
P・D・ジェイムズの作品をほとんど読んできたけれど『秘密』に至まで全てつまらないものはなかった。確かに『死の味』や『ナイチィンゲールの屍衣』等にあった人間の心理の不条理に挑戦していく熱度と切れは、様式の完成で無くなっているようだが、それでもかって想像できなかった、ダルグリッシュの笑顔を感じられる『秘密』はシリーズを読み続けたファンとしては楽しめた。円熟という地平を
もっと遠くまで広げていってもらいたいと願っている。
おもしろい やめられない ★★★★★
いやはや、衰えませんねぇ〜、ジェイムズ先生!
この文字量を一気に読ませる圧倒的筆力。
次々暴露される哀しい過去、もつれにもつれる人間模様・・・・
濃厚な人生の万華鏡スープにどっぷり浸かって、まるで一緒にシェベレル荘園に2、3泊したかのような、読後のこの快い疲労感。
もはやダルグリッシュとエマなんかどーでもいい(笑)。
(あまったるくて飛ばし読み?)
随所に織り込まれた社会批判は、「病んでるのは日本だけじゃない」と思わせます。
シャロンのエピソードの救いのなさは、フィクションを超えたリアリティでぞっとさせます。
そしてエピローグあたりのいきなりの説教クサさにはいささか「着地で減点!」という気もいたしますが、これは、本当に、これが「最終回」ってことなのか・・・(涙)?!
『永遠に終わって欲しくないシリーズ』の最高峰です。
さすがに最後か…… ★★★★★
同い年のディック・フランシスの訃報が流れた。
読み終えてみると、内容的にも一段落ついた感じもする。
さすがに、これが最後になるのだろうか?
PD本人は、この本と前後してミステリ史の本など書いているし、
まだまだ、と思いたいが。

著者本人のことはともかくとして、
半世紀近くにわたって繰り広げられてきた、
アダム・ダルグリッシュという男のドラマは、
ここに幕を閉じた。
そう思っていいだろう。

長いあいだ、ご苦労様でした。
ダルグリッシュにはもう会えないのだろうか? ★★★★★
前作『灯台』でもうジェイムズ作品とはお別れかと思っていただけに、
大いなる期待と喜びを持って本作を読んだ。
今回の舞台は、著名な形成外科医が経営するドーセット州のクリニック。
そこにこれも有名な女性ジャーナリストが顔面の傷を除去するために
滞在するところから、物語は始まる。

他のレビュアーの方も書いているように、大聖堂を思わせる全盛期の傑作群からみると、
ややトーンダウンした感はあるが、ジェイムズ作品に共通する丹念に練られた
重厚なプロット、そして人間に対する皮肉でしかも温かい視線は健在である。

辛辣で緻密な心理描写、脇役にいたるまで丹念に描かれた人間群像、
暴力や倫理の欠如といった現代社会の諸相に対する鋭い視線には圧倒される。
日本でこういったミステリーを書けるのは、高村薫さんくらいか。

ダルグリッシュも人生のターニング・ポイントを迎え、悲しい過去を背負っていた彼も、
ついに新たな一歩を踏み出した。旺盛な創作力を保つジェイムズの新作が
また生み出されることを願ってやまない。
偉大な伝統 ★★★★★
『皮膚の下の頭蓋骨』や『死の味』といった代表作と比べればプロットの緊密性や重層性が劣るのは作者の年齢を考慮すれば仕方のないことだ。
しかし、この小説世界の豊潤さはどうだ。生き生きと描き出される人物や風景、風俗のリアリティよ。描写の積み重ねで読ませる偉大な英国小説の伝統を感じる。誤解を恐れずに言えば、ミステリの枠を超えた読書の醍醐味そのもの。願わくばシリーズがこれで大団円となりませんように・・・。