歌舞伎を見行く前に読むと、より観劇を楽しめる本
★★★★☆
歌舞伎を見る機会はあったけれど、
私にとってはそれほどぐぐっと感じるものはありませんでした。
しかし、菊之助氏主演のNINAGAWA歌舞伎『十二夜』を見てから、
その面白さに引き込まれたのです。
そして、この本を読むと今まで別世界だった歌舞伎が
楽しみ♪として実感できるようになりました。
「名を受け継ぐ」伝統の重厚さがありながらも、
もとは庶民の娯楽として発展してきた歌舞伎の世界が、
現代人にとっても面白いものだと分かります。
記録的に書かれている本なので、
面白おかしくはありませんが、
歌舞伎を見に行く前にぜひ一度読んでいただきたい1冊です。
菊五郎:正当な評価のはじまり
★★★★☆
同年代の中で真っ先に重要無形文化財保持者(“人間国宝”)となった菊五郎ですが、劇界では誰しもが実力のある人気俳優とは認めるものの、他の歌舞伎役者のように声高な外野のファンをあまり持たないためか、その人と芸については不当に語られることが少なかったと思います。そういう意味では菊五郎の芸を語る本が、演劇専門ではない一般の新書として発売されたのはよいことですし、ファンには一読の価値アリです。
「耐え忍ぶ」役が菊五郎に向いているなど、洞察力の高い内容である一方で、菊五郎が得意とする役や演目に関する解説が充実し過ぎているため、歌舞伎初心者には親切ではあるが観劇歴の長い読者にはいささか緩慢となっているのが玉に瑕。
新聞書評
★★★★★
朝日、読売、日経、東京のような新聞書評はじめ、週刊文春のコラムで、酒井順子さんが消化していたので、興味を持って、読みました。期待にたがわず、安きにながれている昨今の新書としては、渾身の力で書かれたすぐれた本でした。音羽屋、七代目菊五郎の芸は、さらさらとしているので、ここまで詳細に分析していくのは、大変だったろうと思います。本人の談話とともに、菊之助、寺島しのぶのコメントも効いています。良書だと思います。
名前と芸と
★★★★☆
本の前半で、七代目菊五郎のこれまでの足跡、父梅幸や音羽屋代々の芸をたどることで、菊五郎という名跡を継ぐことの意味が深く伝わってくる。一言で言ってしまえば「名前の重み」なのかもしれないが、歌舞伎界ではトップクラスの家柄に恵まれた幸運、それゆえの反発心、年齢を重ねることで出てくるゆとり…。実際は重みという言葉で片づけるにはあまりに複雑で長い道のりだということが、菊五郎の言葉からも伝わる。そうしたもの全てが今の菊五郎を創り上げたということに改めて気づかされ、自分がみてきたこの十数年の菊五郎の思い出と重なり合って、しばしば感動を覚える。当たり役について言及した後半では、若衆の風情と市井の人々、忠臣蔵などが好きだ。読んでいると、菊五郎の端正な舞台がふっと眼前に浮かぶのが楽しく、寺島しのぶと尾上菊之助が本のタイトルにもなっている「菊五郎の色気」について語っているのも興味深い。
歌舞伎俳優の世界
★★★★★
江戸時代からの芸が脈々と受け継がれている様子が、七代目菊五郎さんを中心に著わされていて、歌舞伎の歴史は俳優の歴史、人の歴史なのだなと思いました。歌舞伎を観に行くのは好きなので、長く見続けて、その歴史を感じられたらいいなと思います。未知の世界にわくわくさせられ、とても楽しく読みました。