宮崎駿が描き下ろしたオールカラーの絵物語。1982年「アニメージュ」にて『風の谷のナウシカ』の連載を開始したのとほぼ同時期に描かれた作品である。水彩の淡い色をいくつも重ねて着色した絵が美しい。
作物の育たない貧しい国の王子シュナは、大地に豊饒をもたらすという「金色の種」を求め、西へと旅に出る。つらい旅の途中、人間を売り買いする町で商品として売られている姉妹と出会う。彼女らを助けた後、ひとりでたどり着いた「神人の土地」で、金色の種を見つけるが…。どんな状況にあっても、生きようとする人間のたくましさ。強い心だけが生みだすことのできる、やさしさ。そして、弱さと無力さ。宮崎は、短い物語のなかに、そんなものを、ただそのまま描き出してみせる。
世界観の作りこみとそれを表現する絵の力は圧巻。特に「神人の土地」にあふれる虫、植物、巨人、月の造形には、一切の迷いが見らない。彼の頭のなかに広がる原風景を見せられているようで、生々しいほどの迫力に満ちている。死と生、喜びと恐怖の一体となったこの世界観は、以降の宮崎作品にも幾度となく登場する。
チベットの民話に感銘を受けた宮崎が「地味な企画」ということでアニメ化を断念し「自分なりの映像化」を行ったものが、本作である。だがアニメという万人に向けた形をとっていれば、また違うものになっていたはずだ。淡々と、厳かに物語が進行する本書の独特の雰囲気は、絵物語という形態であればこその魅力といえるだろう。(門倉紫麻)
引退前に映画化してほしい。
★★★★★
ナウシカと同時期(20年以上前です)、まだ宮崎監督がブレイクする前に 書かれたチベットの民話(「犬になった王子」?)を
モチーフにした絵本です。
滅び行く運命に抗い、 黄金の種を求めて旅にでる辺境の王子と彼に助けられた奴隷の姉妹。いかなる境遇に置かれても助け合い、
生きようとする魂の力に涙を誘われます。
ヤックルやラムダ、辺境の国、深い谷。その後の宮崎作品にかかせない要素が数多く登場し、神秘的でありながら牧歌的でもある
まさにその後の作品の原点ともいえる一冊です。
何故映画化されないのだろうと常々思っていたのですが、どうも地味という理由で宮崎監督本人が却下してしまったそうです。
ナウシカではなくこちらが映画化されていたら、その後のジブリの展開はどうなっていたのか、興味深いところです。
クオリティの高さは文句のつけどころがない傑作ですので、宮崎監督が引退する前に是非映画化してほしいものです。
今こそ映画化の好機!
★★★★★
この本を買ったのはもう16,7年前のことですが,今読み返しても
新鮮な構成になっていると思います.苦しくつらい生活の中での凛とした生き様,精神を病む恩人を助けぬく決意,だからこそ生まれるゆるぎない心の絆.経済的な厳しさが取りざたされる中,実は最も今の世に大切なものを訴えかけてくる素晴らしい内容だと思います.
これが出版されたご時世はバブルで,貧しい国の王子が豊穣な収穫をもたらすという種子を求めるつらい旅の中で成長していくなどという筋立ては受けるわけがないと,宮崎監督は世に出すのを半ばあきらめていたそうです.
しかし今,多くの人が生活に苦しみ,生きる意味を見失っているこの時代なら,当時の宮崎監督の思いは多くの人達にストレートに伝わるのではないでしょうか.
この物語中の設定は駄作「ゲド戦記」に使われてしまった部分もありますが,壮大で心を打つメインストリーのオリジナル性は失われていません.
この本の内容で,この時代に多くいる指針を失った若者達の励みになるような映画を是非,つくって頂きたいと思います.
宮崎監督,陰ながら応援しております!
さすがの一冊です。
★★★★☆
これを読むと、宮崎駿の絵の力量や、独創性、ストーリーの良さを痛感します。
初版が83年ですから、ナウシカより前の作品ですが、絵を見るとキャラが動き出してもおかしくないほど、臨場感に溢れています。
絵が止まっている分、(変な言い方ですが、アニメではないので)何か、こちらに想像させるものがあります。
これを見せられたら、「天才だなぁ」と思わざるを得ません。
受難の日々を乗り越えようと、全身で立ち向かう美しい少年と少女。
もうすでに、宮崎ワールドがこの作品で花開いています。
まさしく原点的な作品。
ジブリ・ファンはお勧めです。
追記
僕は「ゲド戦記」が好きなのですが、この作品が元になっているだけあって、大分、絵的に似ている部分があります。
映像でみたい!
★★★★★
初めて読んだのに、ナウシカの世界観に似ているためか、どこか懐かしく、読み終わった後に、しばらくあちらの世界から戻って来れませんでした。
ここで終わっているから良いのは解っているのですが、解っていても、続きが読みたい!
続きだけではなく、途中で何があったのか、もっと細かいところまで読みたくなりました。
最近の宮崎アニメはあまりピンとこないのですが、この作品が映画になれば、ナウシカやラピュタの頃のような、素敵な映画になるのではないかと思います。
一冊で完結していて、前ページカラーで、読みやすく、それでいて深く、「本のプレゼント」としては最適な一冊だと思います。
ナウシカ好きならぜひ
★★★★★
全ページカラーです。
漫画のような絵本のような。
とても魅力的な絵で、つい見入ってしまいます。宮崎駿の独特の世界観はいいですね。素敵な一冊でした。
ナウシカの原点と言って良いのではないでしょうか。
ナウシカ好きは買って損をすることはありません。