子供向けエスプリ抑え目版
★★★★☆
20話「半魚人の恋」は屈指の名作「かまぼこ」(70'sの13話)のリメイク。
だが実際は半魚人が人間の少女に片思いを寄せるラブストーリー(?)で、「俺は資本主義ってのには限界があると思うんだ」という名言を残した強烈な風刺を利かせた旧作との共通点は
『人間になりたい→なったあとで後悔。
人間より妖怪の方が自由(人間社会はしがらみがだらけ)』
という最後のオチだけ。オチも十分風刺が聞いてるが「かまぼこ」にかなわない。
22話「いじわる妖怪天邪鬼」は「天邪鬼」(60'sの47話)のリメイク。
大きな違いは天邪鬼とペアを組むいじわる爺さんの背景。
80'sの源次老人は老人の肩身を狭くする世間に不満を抱く根は善良な老人だったが、60'sの為助老人は特攻隊で息子を失い戦後妻も亡くし、高度成長を満喫する社会に対して悪意を抱く老人。源次は心の隙を天邪鬼に利用されたが、為助は天邪鬼と共闘戦線を組んだ。
やがて天邪鬼のいたずらが度を越すようになって鬼太郎に助けられるという筋は同じだが、旧作の為助の方が、人間社会の「業の深さ」を象徴する印象的なキャラクターだった。
80'sは大人向けだった60's、70'sのシナリオを子供向けに噛み砕いてアクションシーンを増やした作品だが、旧作のリリースが進み、80'sを観ていた子供達が大人になった今、それに対応する旧作(「かまぼこ」や「天邪鬼」)を見ると、原作の鬼太郎が持っていた(水木しげるの)人間観や社会観が伺えてより楽しめると思う。