『ネット資本主義の企業戦略』の簡易版といったところでしょうか。
とりあえず簡単なので読みやすいと思います。簡単で読みやすいというのは、中身が
薄いという意味ではありません。内容は読んで考えさせられる本です。
ただ本書よりも前述の『ネット資本主義の企業戦略』や『BCG戦略コンセプト』の方が、
デコンストラクションについてより詳細に説明されているので、星は４つにしました。

以前「リ・エンジニアリング」というコンセプトが脚光を浴びたことがある。しかし、既存のプロセスを激動するビジネス環境に適応させるために適切な制度的調整をもって当たる事は非常に難しいと思われる。著書ではビジネス・モデルをいかに環境要因に適応させることでデコンストラクションに対処していくべきかを説明している。業界が無用化するデコンストラクション（複雑性への対処）、組織ユニットが組替えられるデコンストラクション（多様性の創造と制御）など、次世代アライアンスの在り方やマーケットプレイスなどコミュニティーとソリューションビジネスの在りかたの提起、オープンシステムとクローズドシステム、強いてはセミクローズドシステムなどの理解の基礎など新たなキーコンセプト全てを理解する基盤となりえるエッセンスが著書ではシンプルに扱われている。経済学、経営学が死んだという声が巷で囁かれる中で、その声に賛同すべき資格はこの本の内容とされる以下の要点を理解した読者に与えられる。

つまり、

A）技術変化以外に何が昔と変わってきたのか。

B）システム（制度）のあり方に何が求められてきたのか。

C)技術の発達が市場に許容されることで初めて制度は構築されていくこと。

以上の姿勢で以下の著書の要点を各自で味わい、理解されたい。

①デコンストラクションとは何か？

②インテグレータ型企業形態の何が情報化時代では致命傷　　となるのか？

③オーケストレータ型企業形態を理解することのどこにアライアンスの鍵があるのか？

④技術者の視点からではなく経営者（管理者、そのたもろもろの実務者を含む）の視点からどのようにパーソナルエージェントを理解するべきなのか？

以上の姿勢で著書の要点一つ一つを捉えることで、電子商取引と伝統的な取引の相違、アウト・ソーシングの必要性、川上から川下までのバリューチェーン（サプライチェーンマネジメント）、系列の部分的否定としてのあらたなインテグレータ型企業形態の視点など新たな方向性の理解の第一歩になる。

対象読者としては経済学、経営学、一部物理学にあまり精通していない初級〜中級読者などにもってこいである。

①デコンストラクションを扱っている別書「ネット資本主義の企業戦略」を書店で手に取り難しいと思われたサラリーマン、学生諸君。

②日常業務で、変化の方向性が見出せずに蟻地獄のように雇用環境の変化に受容的でありつづけなければならないでいる有能な派遣社員諸君。

以上、経営学（組織学）や経済学など学術的な書物を理解する時間がない方々でも将来の方向性を見出すための第一歩となりえるものとして、またこれを契機に広く経済トレンド、企業管理、戦略方向性、社会制度の変化、種々のグローバル化の視点などを身に付けていく次のステップへ役立ててもらいたい。読まれた方が環境変化に対して受動的ではなく能動的に行動できるセンスとして身につけ、これを実践にいかされることができればと考え推薦する。