庶民が生き抜く術を知るために。
★★★★★
本書でおもしいのは、巻末に火野葦平の『花と龍』では敵対関係にあった吉田磯吉と玉井金五郎の子息が対談していること。
その磯吉の子息である吉田敬太郎は戦中、東條政権に反発し、皇室不敬罪で監獄行きになっている。東條に反発したのは中野正剛だけかと思ったら、ここにもいたのかと驚き、感心してしまった。
その敬太郎、中野ともに、GHQから解散させられた玄洋社に関係するというのもおもしろい。玄洋社は国家主義団体として解散させられているが、軍事政権に反発しているのだからGHQは何をもって判断したのか不思議である。
かつての侠客と呼ばれる人たちが生まれた下地を知らずして、現在のヤクザを語るべきではないと思う。
そのための入門書ともいえるものが、本書になる。
人は人として生き抜くために、相互に助けあう集団であることを自覚する一冊。