誠実な解説書
★★★★★
以前から気にはなっていたが、なかなか読む気になれなかった「社会病理学」の講座の基礎理論編である。どうも上からの視点(統制の視点と個人への愛の欠落)が気になっていたのだが、読むと構築主義の立場の解説もあり、なかなか勉強になった。本書を手にしたきっかけは私がヤクザに社会学的興味を持ち、どう彼らを位置づけるかを考えていたからである。これについては某社会学会で近々発表することにしたが、社会病理学の理論構造を知ることができて、社会病理学的議論になってもなんとか持ちこたえそうに思う。だが、読み終えて、解放社会学会の視点の方が私には好ましく感じられる。おそらく、個々人の実存への視点が両学会では違っているのだろう。賛否両論あろうが私には社会病理学の基本的な視点を教えてもらって感謝している。