この6枚組のボックスセットは、タイトルが紛らわしい。というのも、このタイトルだとマイルスのコロンビア時代のスタジオ録音を集大成した作品、と誤解してしまうからだ。そうではなくて、これはマイルスとギル・エヴァンスのコラボレーションに焦点をあてた作品である。内容はというと、最初の4枚には『マイルス・アヘッド』『ポーギーとベス』『スケッチ・オブ・スペイン』『クワイエット・ナイト』の全曲と未発表テイクが収録されていて、5・6枚目には『マイルス・アヘッド』のリハーサル・テイクやディスカッションの模様、さらに最初の4枚に収録しきれなかった未発表演奏などがおさめられている。というわけで、中身は相当マニアックだが、その対象がマイルスということになれば、あらゆるファンにとって興味深い作品だろう。我々は完成品しか知らなかったわけだが、このボックスセットでは、その過程でどのようなやりとりがあり、内容が修正されていったかということが明らかにされるからだ。（市川正二）