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オランダ風説書―「鎖国」日本に語られた「世界」 (中公新書)

価格: ¥777
カテゴリ: 新書
ブランド: 中央公論新社
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「世界の中の日本」と言う概念を再認識させてくれる本 ★★★★☆
江戸時代、長崎の出島のオランダ商館の人々が日本にもたらした「風説(噂)書」について、オランダ人と通詞の苦衷、情報伝達のメカニズムを中心に綴ったもの。まず、当時の外国からの入口は四つあり(他は対馬、薩摩、松前)、出島はその一つである上に、中国を含む東南アジアとの交易もあったとの論に、「鎖国」の概念が崩される。中国の国力の相対的低下により、幕府が西欧の動向に焦点を当てた事が、出島の単一入口説の端緒だとする。尚、「風説書」のオランダ側原文は存在しなかったとの立場を取っている。

オランダ人は貿易のみが目的であり、自身(東インド会社)の利益になる事しか通詞に伝えない。敵対関係にあるポルトガル等の誹謗中傷も行なう。「噂だが...」との言い方が可笑しい。幕府の心証を気にはしていた様だ。通詞は得た情報を取捨選択し、体裁を整え幕府に「風説書」を提出する。幕府は2つのフィルターを通して海外の最新情報を得ていた訳だ。幕府が「風説書」を利用する目的は、キリスト教弾圧徹底と西洋風近代化への抵抗のため。本書でも一章を割いて、幕府の脅威がキリスト教から「西洋近代」へ移行して行った過程が詳細に述べられている。翻訳の困難さにも相当筆が割かれている。通詞の誤訳に依って幕府が対応を誤ったとかの事例は無かったのであろうか ? 

本書中、次のオランダ商館長の言辞は興味深い。「日本人はあらゆる通交関係の外に暮らしていて、オランダ人が言うことをほとんど何でも信じる」。現代の映し絵の様である。実際、東インド会社が解散した事は、一年以上も日本には知らされなかったのである。本書は17〜19世紀のオランダ交易の盛衰史を語っているとも言え、その点でも興味深い。「世界の中の日本」と言う概念を再認識させてくれる本でもある。
徹底的な探求心が生んだ、わりとマニアックな本です ★★★★★
出島のオランダ商館は、幕府に西洋事情を書き記した「風説書」を定期的に渡していた。
幕府はそれにより、西洋事情をかなり早く、正確に理解していた。
あのペリー来航の情報も、実は事前につかんでいた・・・。

これが、オランダ風説書というものについて、一般(というほどでもないか)に知られていることだろう。
だが、そこを深く掘り下げてみるといろいろな発見がある、というのが本書のテーマ。
たとえば、
「実はオランダは、都合の悪いニュースは隠そうとしていた」
「幕府の役人の裁量で、わざと翻訳しなかったニュースもあった」
「毎年のように出されることもあれば、数年あくこともあった。それはなぜか」
といったことで、細かいといえば細かいが、それだけに当時の日本人、オランダ人の息遣いが聞こえてくるようで、なかなか楽しい。

オランダの、しかも植民地であったバタヴィアの当時の新聞にまであたって調査する著者の探究心には脱帽。それだけに、
「私の定義によれば、風説書には3種類あって・・・」
「従来はこう思われていたが、私が発見したところによれば・・・」
といった、著者の自負の強さがしばし垣間見えるのはご愛嬌かと(笑)。
本書の隠れた主題である「東南アジア」について関心をもつ人にも一読をすすめたい ★★★★★
 情報と貿易を軸にした関係であった江戸時代の日蘭関係。日本とオランダという、現在でも実利優先のプラクティカルな傾向の強い二国民の関係を「オランダ風説書」の解読成果をもとに、時系列で通観した本書は実に面白い。
 本書の特徴は、海外商品と海外情報を必要とした日本側(=江戸幕府)だけでなく、商品の販売先としての日本市場を独占するために情報を徹底的に活用したオランダ側(=オランダ東印度会社、のちにオランダ東インド政庁)の状況を十二分に押さえたうえの、実に読みやすく、実に興味深い内容の日蘭関係史となっている。

 戦国時代を生き抜いて成立した江戸幕府は、現在の東南アジア海域を舞台にした欧州勢力の動きをつねにモニターしていた。武力ではとうてい欧州勢力に対抗し得ないことを熟知していたために実行した「鎖国」のわけだが、「戦わずして勝つ」ために海外情報を必要としていたのである。この点はもっと知られてよいことだ。しかも、様々なソースからの海外情報を付き合わせて、クロスチェックも行っていたようだ。
 江戸時代の日本は、朝鮮との「対馬口」、琉球との「薩摩口」、アイヌとの「松前口」、それにオランダ、シャム、清との窓口であった「長崎口」の「四つの口」による「管理貿易」体制が実態であった。だから「鎖国」とあくまでもカッコ書きとなる。そのなかでも、長崎だけは江戸幕府が直接管理していたのは、九州の諸大名のチカラを恐れていたからであり、西洋との窓口を一本化するためであった。

 当時のオランダは、世界最古の株式会社といわれる「東インド会社」の拠点をバタフィア(・・現在のインドネシアの首都ジャカルタ)に構えていた。17世紀はオランダの黄金期であり、欧州における貿易と情報流通の中心地であったが、最盛期は意外と短く、覇権は英国に奪われる。
 アジアが天下泰平を楽しんでいた間には欧州は激動期に入り、19世紀初頭には欧州の激動によりついにオランダは一時的に欧州の地図から消える。欧州によるアジアの植民地化が本格的に進行するなか、ついに米国主導により日本は「開国」、以後グローバル政治経済の波に再び飲み込まれた日本にとって、オランダ情報の価値は激減し、ついに「オランダ風説書」は廃止される。そして日本は明治維新を迎えることになる。

 日本とオランダの関係だけでなく、本書の隠れた主題である17世紀から19世紀までの「東南アジア」について関心をもつ人にも、ぜひ一読をすすめたい。
辞めた鳩山第93代内閣総理大臣に読んで欲しかった ★★★★★
外交とは言葉と言葉のぶつかり合いである。と,本書の著者は言う。
アメリカ側のキチンとした情報もないまま、オバマ大統領に「Trust me」
とのたまった,我が国の首相のなんとレベルの低いことか。

長崎奉行は,オランダ商館長から通詞(通訳)が聞き取った,世界の情勢を幕府に文書にして届け出た。
それがオランダ風説書である。長崎奉行も通詞も商館長も私貿易を行っていることもあって、都合の悪いことや、
面倒になりそうなことは幕府には届けでない。

鳩山さんは,米国,沖縄、国内,基地に対する情報をどれだけ掌握していたのだろうか。

商館長は従順な日本人たちを「彼らは何でも信じる」と見くびっていた。

鳩山さんは海兵隊(Marine)も抑止力だと学んだそうだが,それは嘘だ。海兵隊は上陸部隊で、
侵略の先頭にたち、または,衝突地帯にいるアメリカ人をいち早く救助する役目を持つ。
最も危険な最前線いいることが義務付けられる海兵隊のどこが抑止力なのだろう。
鳩山は「何でも信じる」

これも著者によれば「外交は打算と友情」だそうだが,そこを日本の首相は見誤っているのではないか。

この本の文章は,品行方正で,整然としていて,名文ではないが,わかり易い。
するするといいたいことが頭に入ってくる。忙しい首相でもすぐ読めるだろう。
辞めた鳩山さんに今更読んでもらっても仕方がないので,ぜひ菅直人さんには読んでいただこう。
オランダ風説書から見えるもの ★★★★★
 江戸時代の日本にあって、海外渡航は禁じられていた中、数少ない海外情勢の入手経路の一つがオランダ風説書であった。本書はそのオランダ風説書の徹底的な分析から、その背景にある日本、オランダ、そして世界情勢の変遷に迫るものである。
 当時の国際情勢と、江戸幕府の成立といった国内状況からオランダ風説書制度が確立し、展開する様が詳細に論じられる。俗に考えられているように江戸時代が全く世界に閉ざされた暗い社会ではなく、一定の範囲でむしろ積極的に対外政策を管理していたことが了解される。ハイライトはフランス革命からナポレオン戦争期の、オランダと日本、イギリスなどの繰り広げる丁々発止の外交戦だろうか。こうして近代化は着々と準備されたのである。
 ついにはペリー来航による近代国際関係の成立により、オランダ風説書がその歴史的役割を終えるまでが本書の範囲である。ダイナミックな歴史の背景が紙上に浮かび上がる、質実剛健の一冊である。