コンビニ経営者になる前に読むべき本
★★★★★
毎年、近所でコンビニが2−3件なくなり、新たにコンビニが2−3件、別の場所に出来ます。
コンビニが立っても、開店前に、「経営者募集」の案内が張ってあることがあります。
ひどいときは、1月以上、張り紙があって、開店しないことがありました。
コンビニをめぐる紛争も、新聞、雑誌、書籍で読んだことがあります。
知人の家族が、コンビニ経営に手を出して、会社を辞めたという話を聞いたことがあります。
コンビニでバイトをしている学生が、店の商品を「ちゃくる」といって、持ってきてしまう話を聞いたことがあります。
それらの自分が耳にしたことがある情報と、
本書で書かれているコンビニの情報を組み合わせると、コンビニの今後が見えてくるかもしれない。
コンビニ経営者になる前に、これらの本を読んでおくと、こんなはずではなかったということがないかもしれない。
海外に行くと、コンビニがあればと思うことがしばしばあります。
進化するコンビニの将来は、世界展開だと思います。
海外から来たコンビニですが、日本から輸出させることができる文化だと思います。
コンビニに詳しくない人にとって基本書としては良書
★★★☆☆
著者の『自動販売機の文化史』が非常に面白かったので、この本にも手を伸ばしてみた。
この本ではまえがきで著者が述べているように、マーケティングとコンビニ経営の観点にはあまり触れず、
主に日本社会とコンビニ発展との関連をまとめてある。
様々な文献にあたり、いろいろな角度からよくコンビニを考察しているなと思わせられる。
どちらかというと深く内部には入り込まず、著者の仮説も含めながらコンビニをいろいろな角度で外から観察することであぶり出そうとしている論文的な構造である。
ただし直接的あるいは間接的にでもコンビにビジネスと関わっている人から見れば非常に表面的で浅い内容であり、
もう少し深い洞察があればためになるのになと思った。
そもそもマーケティングと経営の観点を軽視してコンビニを語るというには限界があると思われるので、
コンビニをあくまでも客観的に考察してみたいという人にはよいかも知れない。
かなりいい線行ってるが惜しい一冊
★★★★☆
1970年代、行き詰る大量生産・大量消費体制の打開策としてイトーヨーカドー(当時)によって日本に導入されたCVS業態。
いまや都市部・町村部を問わず市民生活には欠かせないものとなったこのCVS業態について、その歴史から小売業に占める位置、社会空間としてのCVSの役割までを広く描き出したのが本書である。
著者の鷲巣氏は出版論・消費社会論・戦後雑誌論、コピーライティング論等、広義のマーケティング関連の研究者であり、フリーライターでもある。
特筆すべきはやはりタイトルにもなっている「公共空間」としてのCVSへの記述であろう。
マックス・ウェーバーの言う「都市の論理」を引用しながら、人間関係が希薄な都市部の生活において、失われたコミュニケーションの場としての「癒し」を求めてCVSに行く人々がいる、それは欧米社会における教会が果たす役割と近い、という記述は実に興味深い。
ただ、本書の記述が都市部のCVSについてにとどまり、町村部との比較などがなされていないこと、公共空間としてのCVSに関する記述にはかなり強引な論理付けがなされていること、また一部記述がある国際比較にしても表面的な部分のみの比較であったりすることなど、若干底が浅い印象を受けるのは残念な点である。
それを考慮し、星4つとさせていただいた。
ともあれ、現代日本におけるCVSを考える上では避けて通れない文献がまたひとつ生まれたことは価値が大きい。
CVS研究者にも、CVSで働く人々にも、利用する人々にも、ぜひ一度目を通して欲しい一冊である。
日本コンビニ史を概観しながら、消費者として主体的にかかわるきっかけとなる良書
★★★★☆
著者はフリージャーナリストであり大学の非常勤講師も務める人物。
日本のコンビニ史をその黎明期から現在までおよそ30年に渡って網羅した労作です。
コンビニが日本社会の大きな変化によって生まれ、そして今もなお変化を続けているという様子が大変よくわかります。人々が「高価なものだから買う」もしくは「安価なものだから買う」という消費行動をするだけではなく、「便利だから買う」もしくは「新しいものにすぐ出逢えるから買う」という最近の消費傾向を受ける形でコンビニが普及拡大してきたというのは大いにうなずける点です。
著者の筆致は手放しのコンビニ礼賛でもなければ無批判なコンビニ批判でもありません。大変良識あるバランスにのっとったもので好感がもてます。
本書の最終段階で、環境問題の側面からコンビニの24時間営業の是非が論じられる昨今の事情について筆を進めていますが、「お上(かみ)が二四時間営業を規制することに反対しているコンビニ本部が、加盟店に二四時間営業を強制するのでは首尾一貫しないだろう」(287頁)と指摘しているくだりは明快です。もっと柔軟な形で、たとえば店舗ごとに営業時間を短縮したりする手法をとることも可能でしょうし、第一に、深夜に顧客数が激減するような店舗では人件費をまかなうだけの売り上げも期待できないという著者の取材によって明らかになった事実も見逃せません。
日本社会に大きく根を張るに至ったコンビニを消費者はもっと主体的に大いに議論していってもよいのではないか。そんな気にさせる良書だと感じます。
コンビニさま、お世話になってます
★★★★★
日本の社会にこれだけ影響を与えてきたコンビニについては、これまでもマスコミが断片的に話題にしてきたが、ここまで緻密に膨大なデータを整理し、さまざまな角度から論じた本はなかったと思う。こういう正しい書物を読むと、ネットではかなわない「本」というメディアのすごさを思い知らされる。情報が著者の頭脳を通して素晴らしく整理されるからである。コンビニが公共空間になるという著者の示唆は興味深い。進化し続けた結果、都市という身体の一部となってしまったコンビニが、地方の寒村に必ず一軒はある「何でも屋」に共通する役割を担い始めているというのは皮肉な結論だが。