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世界の果て

価格: ¥1,650
カテゴリ: 単行本
ブランド: 文藝春秋
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作者の持つもうひとつの側面 ★★★☆☆
現実離れしたモチーフやと会話によって織り成された作品群が並んでいる。
「リアリティがない」「作り話めいている」という批判はあたらないだろう。
最初からリアリティのある作品を作ることを作者が放棄しているように思われるからだ。

どの作品にも共通しているのが混沌とした読後感。
「狂気」と言えるほどの鋭さや烈しさはなく、まるで気色の悪い悪夢を見続けているような感じがした。

作者の私的な呟きがちりばめられているような、そんな生々しさを覚えた。
正直なところ、個々の作品としての完成度は高くないと思う。だが、その反面、作者の肉声を聞いたような生々しさ
が際立っているような印象を受けた。

絶望し尽くした先に見える希望☆ ★★★★★
やさしさや美しさ、そして醜さや弱さをわけることなく

人間そのものを見据えた作品を発表し続ける著者による初の短編集。


幽霊を見ることができる青年を主人公にした『月の下の子供』


執筆当時の筆者の(かなり危うい)精神状態が色濃く投影されたという『夜のざわめき』


ある日家に帰ると、部屋の中で見知らぬ犬が死んでいたことから始まる

数人の男たちをめぐる奇妙な物語『世界の果て』


など、孤独と諦めのなかに生きる主人公と

彼を取り巻く少し風変わりな環境を

重苦しさと奇妙な軽さが入り混じる筆致で描きます。


個人的に印象深い『戦争日和』は

近親交配をかさねたことによるペットの遺伝病

やさしさやを押し付けるベストセラーなど

今日的なトピックスを織り込んだ寓話色の強い作品。

突然、主人公を訪ねてきた男が口にする

「私たちのモヤモヤをね、早くミサイルにでも何でも込めて、飛ばして欲しいですね。」

「空が綺麗です。青空です。戦争日和ですね」

という言葉が、それほど遠い世界の言葉に薄ら寒くなりました。


各話が進むにつれ、

登場人物たちの混迷はどんどん濃くなりますが

最後に収められた『世界の果て』では

最後の最後に、うっすらと光明がさします。

そのため、読後に気分が重くなることはありません。


明るく楽しい話もいいけど

そうした健康さにちょっと付いていけない

―そんな気分の時には、こうした本を読んでみるのもいいかもしれません☆