まっさらなカンヴァスみたいに
★★★★★
画家で絵本作家の著者によるエッセイ集。
海、旅、チェロ、雪…
絵のない本であるのに、ページをめくるたび豊かなイメージが眼前に広がる。
画家のまなざしを通して、わたし自身がいつか見た風景を再発見している。
そうか、絵筆を持たなくとも、画家は常に「描いている」んだな。
いせひでこさんという人は、まだ絵の具をのせていない、一本の線も引かれていないまっさらなカンヴァスみたいなひとなのだと思う。
描いても、描いても、汚れるということがない。
色を塗り重ねるほど透明に、純粋になる。