「昭和世相」「社会派」だけでない清張の語りが光る傑作連作集
★★★★★
単に「昭和世相」「社会派」というに止まらない、やはり清張さんはストーリーテリングが上手だなあと唸らされること請け合いの、傑作連作集です。
子供向け世界○大ミステリーのひとつに「呪われたダイヤ」というのがあるでしょう。持ち主を転々として、なぜか持ち主には不幸が訪れるというあれです。本書は、あの日本版、昭和版に清張さんの見事な味付けがされたものと思えば話が早いと思います。
それにしても上手です。男女のドロドロした情念は僕は苦手ですが、清張作品だけは別です。「或る小倉日記伝」から脈々と流れる、美しいことが災いして不仕合わせになる女性の姿が、美しく、切なく、印象に残ります。お勧めします。