インド象の親指
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「人望」や「人徳」という異質な能力がいつの時代も、民族、宗教、政治体制などに関わらず必要とされてきたことは言うまでもないだろう。山本氏は、「人望」や「人徳」とは生まれながらの性格や性質によって決まるのではなく、誰でも学ぶことによって修得できる能力であると、朱子が書いた『近思録』の一文を示して述べている。すなわち、法科に学べば法律家の能力を獲得できるように、「徳科」に学べば、「徳」という異質な能力も獲得することができるのだ。この本では、先ほど挙げた『近思録』のほか、孔子の『論語』や朱子の弟子である劉子澄が編纂した『小学』、旧約聖書の『箴言』、旧約外典の『ベン・シラの知恵』などの内容を紹介しながら、「人望を修得する方法」を読者に伝えている。とは言っても、この本の「教(おしえ)」はそう簡単に実践できるものではない。しかし、「教」を心に刻み、自己を制御しながら生きていくことが「人望」を獲得するための最善の道であろう。この本は、ビジネスマンのみならず、これから社会に出る者にとっても必読書である。