テーマは「ヨーロッパvsアメリカ」及び「絶対的正義とは何か」
★★★★★
サスペンス映画を代表する傑作。戦後のウィーンを舞台に退廃したムードが漂う中、愛と友情と裏切りを表向きのテーマに、「光と影」を強調した撮影技法(特にハリー(O.ウェルズ)が夜の街角で最初に顔を出すシーンは秀抜)、A.カラスが奏でるツィターの音色、ストーリー構成の妙が重なって味わい深い作品になっている。公開当時は、「(監督の)リードが(ヒッチコックを)リードした」と称された。
そして、隠されたテーマは「ヨーロッパvsアメリカ」であり、「絶対的正義とは何か」である。本作の狂言回しであるホリイ(J.コットン)は典型的なアメリカ人。友人のハリーのためにおせっかいを焼くが、連れ込まれた演説会で総スカンを食うわ、ハリーの愛人のアンナ(A.バリ)に惚れた挙句に全く相手にされないわ、ハリーには裏切られるわで、完全なピエロ役である。その総決算がラストシーン。アンナを街路の上で待つホリイの横を、無表情で通り抜けるアンナの姿は、当時のヨーロッパから見たアメリカ観を見事に映し出している。映画史に残る名シーンだと思う。地下水道のシーン(撮影はパリ)でも、何故発砲するのがホリイでなければならなかったか最初は不思議だったが、上の構図を理解すれば納得が行く。A.バリという女優は本作でしか観ていないのだが、強い印象を残した。
そして、「絶対的正義」。これはアメリカ観とも被る。有名な観覧車のシーンでハリーが吐くセリフ「ボルジア家の圧政は...」は詭弁だとしても、非常時における正義とは何か、あるいは絶対的正義というものが存在するのか否か考えさせてくれる。ハリーの行為とは別物だが、日本でも闇市や法を守って餓死した裁判官が存在した。また、「絶対的正義」はアメリカを中心とした今日的問題である事は言うまでもない。テーマ、撮影、音楽、演出、俳優陣と何拍子も揃った名作。
ウィーンの街並み
★★★★☆
昨年、両親がオーストリアへ旅行にいきました。その時のウィーンの街並みが素晴らしかったと、それでこの第3の男の撮影がウィーンで行われたらしく、もう1度その景色を観たいと購入を頼まれました。元気なうちにまたいけるといいですね。
凄いサスペンス!
★★★☆☆
です。予想も出来ない展開が繰り広げられ、ラストの逃走劇は素晴らしいかった。
作品の出来には文句なしです。
しかし、何故メニュー画面がないんだ。
画質も作品の価値のうち
★★☆☆☆
本作品の内容についてはすでに多くの方々が言及しておられるので触れません。
名作だと思います。買ってでも見たいと思う作品だから購入したのです。
しかしながら、同作品のBSアナログ放送を録画した我が家のDVDと同程度で、フィルムの損傷とは異なるノイズも入っている画質には失望しました。
深い余韻が残る名ラストシーン
★★★★★
冬枯れの並木道を一人の女が背を向けて歩いていく。それを見送る男。ラストシーンの余韻とチターの奏でる名曲。素晴らしいエンディング。これだけでも映画史に残る傑作。
サスペンス映画でありながら、反戦映画でもあり、一人の女をめぐる恋愛映画でもある。
アリダ・バリ(夏の嵐)の、大人の女の魅力。男に媚びない凛とした姿。
他のレビュアーの方々が書かれているとおり、名場面(観覧車と地下水道の追跡の場面)が目白押しの映画。サスペンス要素たっぷりで、飽きさせない。ウィーンの夜の街を効果的に照らすために石畳を水でぬらして撮影された。
この映画の中で忘れられないセリフがある。
「スイスの永い平和が生み出したものは、鳩時計だけだ」は、オーソン・ウエルズが考案した台詞。非情に含蓄がある言葉。戦争によって、発明、発展をもたらしたものが多いという皮肉。
10代から30代でこの映画に挑戦したが、自分にはまだ面白さを理解するのが無理だった。自分が40代の半ばを過ぎて、見たときにやっとこの映画の良さがわかった。
今では、もちろん傑作の一つであると思っている。