壮絶
★★★★★
西国十三藩が謀議の上、何やら策略を巡らしている模様。
水野越前守忠邦の側用人・武部仙十郎の密命により、たった一人でこれを打ち砕くべく、西へと旅をする。
物語は江戸日本橋に始まり、下巻では京三条大橋で閉じるので、五十三次に相応しい。
ただし、この五十三次は、おびただしい流血を伴う。
敵の数は著しく多い。
ただし、敵とて、武士道に則っている。
例えば、薩摩藩の精鋭、隼人隠密党の十三人が狂四郎と対峙した際、全員が一度に斬りかかるのではなく、一人また一人と挑んでゆく。
そして、ことごとく返り討ちに遭うのだが、一度に斬りかかるなどという事を行えば、後々の笑い者にされるというのだ。
狂四郎とて、危機一髪の場面が幾度もある。
それらを、間一髪で切り抜けてゆく。
昭和三十一年から週刊新潮に登場した狂四郎、この孤剣五十三次は昭和四十一年よりの連載。
ハーフで色白、ニヒルで無口、円月殺法を繰り出す狂四郎は、意外にも、据え膳は食う主義で、ことに生娘が好物だ。
一連の作品では、著者の教養の高さを強く感じる。