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刑事一代―平塚八兵衛の昭和事件史 (新潮文庫)

価格: ¥700
カテゴリ: 文庫
ブランド: 新潮社
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三億円事件の捜査の多くは無関係だったようで、気の毒だった。 ★★★★☆
名刑事として有名な平塚八兵衛が、吉展ちゃん事件・帝銀事件・小平事件・
スチュワーデス事件・下山事件・カクタホテル殺人事件・三億円事件について、
当時自分がどういう捜査をしていたかの回顧録。500ページ強のうち、
後半200ページ以上を三億円事件に使い、事件によってページ数はバラバラ。

八兵衛がどういう捜査をしていたかの本であって、事件の概略は詳しくなくわかりにくいので、
特に帝銀事件・下山事件については、松本清張の「日本の黒い霧」などを既読してから
これを読むとわかりやすい。

三億円事件はいろいろな本が出ているが、当時の細かい状況は、
過去のどんな著作よりも詳しく出ているので、おもしろいし、ためになるし、
知らなかった話もたくさん出てくるので勉強になる。

但し、三億円事件は結局犯人が捕まらなかったので、八兵衛が必死に追いかけていたあらゆるネタは、
後で考えると何にも関係がないつまらない無関係な事を追い回していただけと思われるので、
その点は読んでいて気の毒だ。帝銀事件の平沢も、最後まで犯行を否認していたのだから、
警察が平沢を当時自供させたのは間違いだったかもしれないが、
八兵衛の証言本だから、そういう後日談が検証されているわけではない。

新聞記者の佐々木嘉信氏他が、八兵衛の語り口調でまとめた文なので、読みやすい。

とても興味深い ★★★★★
 私にとっては、良くも悪しくも、とても興味深い本でした。

・ 平塚八兵衛自身が言葉もなまなましく語る戦後事件史。べらんめえ口調で信念のかたまりのような話しぶりには圧倒される。以前から「戦後の有名事件に多くかかわってきた平塚八兵衛とはどんな人?」と思っていたので、その人物像がよくわかった。
・ 吉展ちゃん事件、帝銀事件、下山事件、三億円事件など有名事件について、捜査に携わった平塚八兵衛からみるとどう見えるかがとても興味深かった。
・ 一方、刑事根性はすさまじいものの決して悪人でない平塚八兵衛であるが、その事件観は「これしかない」という断定的なもの。さまざまな可能性(下山事件が他殺事件ではないかとか、帝銀事件の平沢は本当に犯人かなど)を全くかえりみないことには、驚きとある種恐怖を感じる。最近でも警察による冤罪事件がよく問題になるが、それもこんな刑事根性からきているのでは?と感じさせる。
・ 全500ページのうち三億円事件に200ページが割かれているが、つかまってもいない犯人について「こんな人物」と断定的に多くを語るのはどうかと感じる。いわば「敗軍の将」なのにここまで自信たっぷりに、ある種えらそうに語るのは警視庁捜査一課で長年重要事件を手がけてきた自信か、過信か、おごりか?と感じる。

 このように様々な点で興味深い本ですが、平塚八兵衛の事件観だけでこれらの重要事件の姿を判断するのは危険です。著者(佐々木嘉信)は新聞記者なのだから、もう少し違う事件観もあることを文中コメントに書くべきだったのでは?と思います。
警察の取調べを味わった人には。 ★★☆☆☆
平塚の魅力的なところは、犯罪者を傷ついた一人の人間として見ようと努めているところだ。顕著なのは、彼を名刑事たらしめた「吉展ちゃん事件」のケース。死刑になった犯人の小原保は、足を不自由だった。そして彼は、死刑執行前に平塚に感謝の意を伝えている。私は、あえてこの章をお終いに読んだのだけれども、平塚が小原保の墓を訪れるところで涙してしまった。ここだけで終わる本なら星5つでもよかったと思う。

ただし、真相が明らかになりつつある「下山事件」(平塚は自殺説)や「三億円事件」(平塚は単独犯説)に関しては、名刑事の誇りと直観が災いして事件の真相究明をさまたげた印象を受けた。

さらにいえば、身に覚えのない罪を「白状しろ」と警察に迫られた経験のある身としては、「帝銀事件」を「平沢しかありえない」とするある種の割り切り方には、恐怖を覚える。刑事にとっては、自白してくれた被疑者ほど可愛いものはないのだ。平塚のコメントを読んでいると、平沢の日本画の巨匠としての肩書きが気に入らなかったのではないかと思えなくもない。

こうした弱点は、著者からの明確なコメントがあれば、かなり補えたはずで平塚のコメントをただ取捨選択しただけという内容は、資料としては、興味深いが読後感は、釈然としないものが残る。

犯人をあぶり出す臨場感にあふれた語り ★★★★★
帝銀事件から3億円事件まで、いくつもの事件にかかわった刑事の側から見た犯人の見つけ方、アリバイの崩し方がよく分かる。下山事件などは他殺説の見地から書かれたものが多いが、平塚刑事の視線からは自殺説以外は考えられない。
また三億円事件では、犯人のとった行動などがよく分析されていて、当時の新聞でもここまで検証したものはなかっただろうと思う。またあのモンタージュ写真があまり信用できるものではなく、それが捜査や民間からの情報提供に支障を来たしたとは目から鱗の話でした。
30年前に刊行した本の再文庫化ということだが、昭和史の貴重な証言として☆5つ。
これが早くわかっていたらなあ ★★★★★
 昭和の大事件をあつかうドキュメントの本を読むと、
「平塚八兵衛」
という刑事の名前が頻繁に出てきます。
 興味があって探していましたが、絶版になっていて図書館でもありませんでした。
 先日本屋で平積みしているのを見つけて小躍りして購入しました。
 「落としの八兵衛」
と書かれているので、人情話みたいな内容か…と思って読み始めたのですが、ちょっと赴きが違いました。
 真実に近づくためにどんな作業をして、どんな結果が出てきたか。
 それを、
「誰でも納得できるように説明している」
そういう本でした。
 この人の頭のいいことには本当に舌を巻きます。
 べらんめい口調ですし、上司とやりあった話なんかが挟まれるので、ガラッパチのおじさんの印象ですが、
事件にあたって筋道を浮き上がらせていく様子は
「本物の迫力とはこういうことなんだな」
と、本当に感心させられました。

 「『現場百回』というのも、できるだけ多くの疑問を引き出して、ひとつずつそれをつぶす、そういう意味なんだな。」
 「疑問があったらとことんやれってことだ。」
という言葉のとおり、
事件の現場や、目撃者、身内、遺留品などに、
とことん調査をしていく様子が語られていて興味深いものとなっています。
 平塚八兵衛刑事の理知的な捜査方法や、一つ一つの行動の合理的で緻密な様子が語られています。

 吉典ちゃん事件の犯人が盗んだと証言した「シミモチ」は存在しなかったこと。
 帝銀事件で使われた名刺の出所をあたり128枚行方を捜して東北から北海道をまわり回収したこと。
 下山事件での目撃者の証言の数々
が親しみやすい語り口で説明されていて、迫力があります。

 とくに、興味深かったのが三億円事件でした。
 遺留品のトランジスタメガホンの塗装をはがし、しみじみながめていたらマウスの部分から新聞紙のうっすらとしたあとをみつけた。
文字の配列からサンケイ新聞の43年12月6日朝刊婦人欄「食品情報」婦人欄ということを割り出した。
紙質から大王紙をつかっていることをつきとめ、そこから輪転機をたどって、配達地域を限定した。
という場面など、地道ですが迫力がある捜査の様子がたくさん語られていてどの件もとても興味深いです。
それぞれに現場の状態の図や、脅迫状、新聞掲載の写真などが載っています。

期待していた以上にとても面白い本でした。
再出版に感謝します。