ローカルだが情報量厖大
★★★★★
多摩とは言ってもこの本が扱う地域は山手線以西,南は神奈川県厚木までで,住民の総数は千万人を超えるだろう.北は西武新宿線までで,池袋発の線はない.最大の特徴は扱われた鉄道が出来た当初と現在とが5万分の一地形図で比較されていること,それに著者の呆れた博学多識である.本来は2万5千分の一地形図が使われていたらしいが,単行本化に当って切替えられた.その結果現在の5万分の一地形図の質の悪さがこれでもかと言わんばかりに浮き出てしまった.それでも,完全に破壊された多摩丘陵の在りし日の姿を見たければこの本が有力な頼りになる.著者の多数の地図本の中でも,際立った力作である.表紙とカバーは京王電車沿線名所図会 (1931) で,これだけでもこの本を求める価値がある.関係住民に特に推薦.