とても20年前の文庫本とは思えないスタイリッシュさ
★★★★☆
私の好きな作家が愛読書として
紹介していましたので手にとってみました。
1990年、今から20年前に発刊された
文庫なのですが、文章がスタイリッシュというか
小ジャレていて、とても20年前のものとは思えませんでした。
ひょっとすると、バブル全盛期でしたので、時代の勢いがそうさせたのかもしれません。
短編で構成されており、どの話もベースは
”うじうじした男性”と”強い女性”が織りなすストーリーになっています。
全編において
「オンナって怖い生き物だな。オトコの手には負えないな。。。」と痛感させられました。
男が読むには、ちょっぴりこわ〜い作品でした。
珠玉の短編集
★★★★★
「優しくって少し ばか」ポエム様な改行を使って進むなんて事ない男女の一風景ですが、幻想的な雰囲気をもってストーリーは進みます。それでいて微笑ましく、そして暖かい気持ちになれる短編です。
私が一番気にいっている作品は「雑司が谷へ」です。
妙にリアリティがあって、
「原田氏は本当にこんな事を体験したんだろうか?」
とあらぬ想像をしてしまいました・・・。男の非情さと女の脆さ、二人の温度差が読んでいて痛々しい程です。
「テーブルの上の過去」はこういう気取った、よく言えば洒落た作品を書くと原田氏の凄さが分かります。
阿刀田高氏を彷彿とさせる少し背筋がぞっとするようなミステリー集だと思いました。
悩む男心と女心
★★★☆☆
男女の心のかけひきの本です。読むと、「あ〜、わかる」みたいな感じですかねえ。
全てに当てはまるのは、誰一人として年齢が出ないこと。
評価が結構高かったので読んでみましたが、私には少々向かなかったようで
全体的に、男性の目線から書かれていますので、男性の方が読まれたほうが共感得られると思います。
恋愛等でお悩みの方、時間つぶしにご覧になるのもいいかもしれません。。。
強く印象に残る短編集
★★★★☆
何気なく読んでみたら、素晴らしい作品ばかりなので驚いてしまった。
それぞれのタイトルからソソられるものはない。あまりピンとこない。しかし、これが読んでみると唸らされた。表題作はもう付き合って長いと思われる男女が電話で会話するだけの話である。男の主観で描かれるのだが、とりとめのない会話の中で男なら誰もがたどったことのある思考の過程が膝を叩いて喜んでしまうくらい楽しく描いてある。
以降の作品はすべてどことなく不気味で不安な作品ばかりだ。ミステリ色が濃い。「西洋風林檎ワイン煮」は、奇妙な味のホラーだ。女が鍋の中で煮込んでいるのは何なのか、気になって仕方がない。
そして、そして本書の中で一番気に入ったのが「ポール・ニザンを残して」。コレ読んでびっくりしてしまった。良質のミステリではないか。このラストの切れ味の良さはどうだろう。心地よいショックだ。この一作を読むためだけでも本書を買う価値はあるといえる。その後、角川ホラー文庫から「屑篭一杯の剃刀」という自選恐怖短編集が出たが、「ポール・ニザンを残して」は、そこにも収録されている。
とにかく、この短編集はめっけもんだった。いまだに強く印象に残っている。
原田氏の幅を感じる作品
★★★★☆
先ず最初の「優しくて少しばか」は彼の人となりを表した作品と位置づけられるかもしれない。彼の作品群の中では、最も克明に心理描写が行われている。その心の中に一瞬に繰り広げられそして次の瞬間には消えている感覚、感情、思考を余すことなく文章に置き換えるこんな作業を行った結果、彼は、心の中の思考のスピード感、連続性を表現するために句読点を使用しないという新しい表現方法を見出したのでは無かろうか。主人公の感覚、思考に同化出来た部分では、通常の文章とは異質の臨場感を味わうことが出来た。しかし、主人公と一旦感覚・思考がズレた途端、文章を追う事すら非常に困難となるのである。実に面白い読感だし、彼の実験的なチャレンジを素晴らしいと思う。
2作目の「西洋風りんごワイン煮」では、一転して某TV局タモリ司会のホラーサスペンス短編の脚本を思わせる作品。
3作目の「雑司ケ谷へ」。これは、非常に興味深い作品で、男が感じとる女の描写としては相当高いレベルではないかと感じさせられた。
4作目は、ショートホラー
5作目「ポールニザンを残して」は、とにかくお洒落な物語。
6作目は、ある過去に対する現在の認識を変えることが出来れば、それは過去を変えたことと同じだという面白い切り口で描かれたもの。
以上、著者の自画像とも思える作品が冒頭にあることによって、後の作品の味わい方が全然違ってくる。そんなことを実感しましたよ。