ボサ・ノヴァ界で、アントニオ・カルロス・ジョビンが作曲の大御所で、ジャズ・テナーサックス奏者スタン・ゲッツがアメリカにおける最も雄弁な解釈者だとしたら、ジョアン・ジルベルトは天使の声の持ち主と言える。彼のブラジル出身アフロインディアンのポルトガル語は忘れがたく詩情にあふれ、1958年以来、その洗練さとあらがえない魅力により世代を越えて魅了してきた。カエターノ・ヴェローゾのプロデュースによる本作は、ジルベルトにとってほぼ10年ぶりのスタジオアルバムであり、待たされたかいのある作品だ。ジルベルトはボーカルとギターだけで、リスナーの理性と感情をオーケストラにも匹敵する音楽のパワーで満たしてくれる。もちろん、ボサ・ノヴァの名曲「Desafinado」「Voce vai Ver」「Chega de Saudade」の哀感とパワーも失われていない。また、ヴェローゾの「Desde que Samba e Samba」「Coracao Vagabundo」も取り上げ、エルネスト・レクオーナの「Eclipse」とジルベルト・ジルの「Eu Vim da Bahia」でも、40年にわたり彼を伝説の人にしたあのソウルフルなサウンドを奏でている。(Eugene Holley Jr., From Amazon.com)