迫力に欠けるシンポジウム
★★☆☆☆
この本は2004年に実施された文部科学省科学研究費による公開シンポジウムの講演をまとめたものである.しかし,代表者の赤沢氏はともかく,あとの八名はネアンデルタール人 (以下 NT) の専門家とは考えがたく,従って内容もとにかく海外の文献を読んでみた,の域を出ない.要するに切実感がない.たまたま今日(2005年2月15日)のNewYork Times 科学欄に,最近開かれたシンポジウムの報告が載った.題は For Neanderthals and Homo Sapiens, Was It De-Lovely? つまりクロマニヨン人(以下 CR) とNTとの交雑はなかったのか,と言う白人にとっては切実極まる問題である.現代人のなかで,白人(つまりCR の子孫)だけがNTと共存したので,NT問題は即白人問題なのだ.この記事の充実した内容を見ると,NT問題は英語で読んだほうが良さそうに思われる.付記(2006年12月) NT のゲノム解析が完了に近い.来年には具体的な事実が公表されよう.