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バルトーク―民謡を「発見」した辺境の作曲家 (中公新書)

価格: ¥777
カテゴリ: 新書
ブランド: 中央公論社
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研究者 vs 作曲家 ★★★★☆
バルトークと言う「作曲家」の成り立ちを知りたくて購入したが、読み解くうちに「人」「研究者」としての側面について、知らなかったことを、次々と提示され、「なるほど」と手を打つこと、しきりだった。オーケストラメンバーとして、「弦チェレ」と「オケコン」の間のギャップに、常日頃疑問を抱いていたが、多少ともそのギャップを埋める情報をいただいた感がある。読み物として面白く、この手の書籍としては、例外的に一気に読み終えてしまった。
興味深いバルトーク論 ★★★★★
 現代音楽家としてではなく、民俗音楽研究家としてのバルトークに焦点を当てた、たいへんユニークな書。もともとバルトークは、そのふたつの仕事をほぼ同比重で考えていたようで、著者のアプローチは納得できる。
 ナショナリストとして出発したバルトークが、民俗音楽の採集を通じて、「舞踏組曲」のような民族和合の方向へ政治的に転換してゆく過程がたいへん興味深い。面白いのは、バルトークの同じ研究が、最初はハンガリーから非難され、トランシルヴァニアがルーマニアに併合されたのちはルーマニアから非難されるという下りだ。バルトークはこれを「わたしの研究が学問的に正当であるという証拠」と皮肉を込めて書き記している。また、神格化されているコダーイとの「盟友関係」についても実態の一端をあきらかにしている。
 民俗音楽研究は、カルチュラル・スタディと同様、政治性を払拭することは不可能だ。そしてバルトークにおいても、優れている=優れていないという軸の設定や、自分の論文が政治的に利用されたことを含めて、そのことへの自覚は十分に持っていたようである。こんにちにおいても、音楽の政治性というものについて考える上で、大変示唆に富んでいると思われる。お勧めだ。
ナショナリストとしてのバルトーク ★★★★☆
サブタイトルが全てを表している。『中国の不思議な役人』や『オーケストラのための協奏曲』のバルトークではなく、東欧の民族主義が勃興する中で、ハンガリー的なアイデンティティーを探し求めるという行為を音楽家という立場で実践した一ナショナリストとしてのバルトークを描いている。

 民謡を採取に田舎に赴いたバルトークが、税金でも取られるのではないかと心配する農民相手に「古い歌を歌ってください」と懇願するシーン(pp.44-49)が秀逸。これは彼の手紙からとられたものだが、ナショナリストとしての指命に燃えるバルトークが、終いには「こんなことにはもう耐えられない。馬鹿げている。忍耐、我慢、辛抱-みんな糞くらえだ-もう家に帰るよ」というあたりは、アタマでっかちの活動家が、民衆にやんわりとしかし厳しく拒絶されるということが、どこの世界でもあるんだな、ということを思い起こさせてくれる。

 そして苦労して研究した成果を発表すると、右翼からの批判にさらされる、というのも哀れだ。また、論争の中で熱くなったバルトークがハンガリーの文化的優位性に言及してしまうあたりも「ナチスに敢然と抵抗し、諸民族の共存を願った」というイメージにそぐわない(pp.90-91)。でも、こんな言葉を思わず発してしまうバルトークは好き。後半のハンガリー音楽=ジプシー音楽という通念をめぐる音楽的な論争は正直、よくわからない。