中国人と日本人。見かけはよく似ているが、そのことは中身が似ていることをなんら保証しはしない。双方が付き合うにあたっては安易な親近感、同情やセンチメンタリズム以上に、落ち着いた冷静な判断力が要求される。これはなにも中国だけに限らない。国や地域が異なる場所へ入り込むときは、顔は笑っていても細心の警戒を怠らないのが世界通常の常識である。

記者は文藝春秋などを舞台に活躍する中国専門のライター。現代中国が抱える問題点を、厳しくも暖かい視点−中国の良心的な知識人に近い視点に立って報じる姿勢には好感が持てる。さすがにプロのライターだけあって文章は読みやすいので、中国に対する知識があまりなくてもすいすいと読んでいける内容だとおもうが、カバーしている話題が幅広く、分析も深いので、ある程度中国と実際に行き来するようになってはじめて実感を伴う理解が可能な本かもしれない。中級編のおすすめ本ということで★五つ。