古くて新しいジャズ
★★★★★
5年ほど前、個人的な理由から生のビッグバンドに接する機会があった。テレビ、ラジオ等々を通して小さいころから接していたものの、改めてそのすばらしさに感銘を受けた。その後幸いなことに同時代の方のお話が伺えた。実に興味深い話の集まりだった。さらに知りたくなったのだが、あいにくそうしたものを取り上げた本が見当たらない、いや、それどころか太平洋戦争直後をテーマにした本が少ないこと。
そんな中この本に出会ったのはまったくの偶然だった。一気に読んだ。大変興味深かった。やはり筆者は情報源(資料)にお困りのこととお見受けする。多くの方へのインタビューを通して、この論文を書き上げたわけだ。一番印象に残ったのは、前述、同世代の方から伺った話と微妙に食い違っていたことだ。どちらかが間違い、どちらかがうそ、というわけではないだろう。その両方が、ビッグバンドを形成していたのだ。
私の原点を探した思い
★★★★☆
1954年生まれの人間にとって、この本に登場してくるミュージシャンの音楽は、子供心にも、ハイカラで素敵だった。
当然、ジャンルなど分からないので、気に入ったものを聞いていたという感じかな。
ここで、雪村いずみさんやジョージ川口さんらに出会ってなければ、Beatlesにたどり着いたのだろうか?
ただ、この本で、進駐軍クラブでの生活などが細かに書かれているものの、そのことと、題名にある「歌謡曲」と言う部分の関係がよく分からない。ホリプロ設立だけでは説明したとはいえないだろう。
「歌謡曲」を何をさすのかもよく分からないが、このあたりの記述の薄さが残念。もし私のイメージする演歌的なものであるとすれが、どうでもいいことだけど。
占領軍と日本の音楽との関わり
★★★★☆
第二次大戦後の占領期日本に設置された進駐軍クラブにおける日本人の音楽関係者たちの活動や、文化的意義を考察した本である。
軍楽隊で働いていた人たちは、戦後も音楽を忘れることができず、
クラシックあるいは全く新しいジャズという分野で演奏していくのだが、敗戦という思いよりまずは、生きていく事を重視し、日本の中の
「アメリカ」である進駐軍クラブで働く。そうした人たちの聞き書きが
非常に面白い。
クラブで演奏する人々、演奏する人を仲介する人々、そして米軍施設やクラブで働く人々等様々な日本人を描いていて非常に興味深い。
さらに、進駐軍クラブでの音楽が、戦後の日本の歌謡曲を含むポピュラー音楽に多大な影響を与えたというのが、本書の要旨である。
確かに斬新な内容であり、面白く読める。しかし本書の目的である「ポピュラー音楽文化への影響」について深く突っ込んで書かれていないように思う。むしろ、当時働いていた人たちの直接のコメントが最も面白い。