惚れこまずにはいられない魔性の魅力
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吸血鬼ハンターD―人間と吸血鬼の混血児(ダンピール)である彼は、辺境を旅する孤高にして最強のハンターであり、この世のものとは思えないほどの凄絶な美貌の持ち主です。レーザーをも斬る剣技、誰もを圧倒する鬼気を放ちながら、どこか悲壮感を漂わせる彼は、まさに女ならば惚れこまずにはいられない魔性の魅力に満ちています。
無口で無愛想で無関心で、刃向かうならば女であっても容赦しない彼ですが、基本的には優しい人です。ふとした言葉や何気なくとった態度から、彼の中にある思いやりがうかがわれます。けれど、本人にその気はないのに、出会った人間をどちらかといえば不幸にしてしまうD。ダンピールゆえに人としては生きられず、さりとて貴族(吸血鬼)でもなく、放浪して生きるDからは、壮絶なまでの孤独と宿命が感じられます。
ぜひ一度読んでみてください。髪の先、爪の先まで美しく思えるDの魅力にとりつかれたら、きっとこの作品の虜となっているでしょう。
独創的な世界観に魅了される
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私が生まれる前から続いている小説です。
菊池さんの作品はどれも好きですが、ダントツでお勧めなのがこの吸血鬼ハンターシリーズ。
貴族と呼ばれる吸血鬼を恐れる村人が住んでいるのは、貴族(吸血鬼)の文明が滅んだあとの世界です。
中世ヨーロッパの雰囲気を醸し出しながらも、その世界は菊池さん独特のもの。
機械化されたサイボーグ馬や、バリアの張り巡らされた村など完全に「吸血鬼ハンターD」の世界が出来上がっています。
Dが旅の途中に立ち寄る村では生き残りの貴族の脅威に晒される村人たち。
そこでは敵と戦うDの圧倒的な強さ、美しさが全力で表現されており、イラストの美しさも相まってスタイリッシュな美を堪能できます。Dが来れば大丈夫という安心感は、水戸黄門を彷彿とさせるところもあります。
また、D自身も謎に包まれた人物であり、巻が進むごとに少しずつ謎がとかれていくのが面白いところ。
個人的にはどの巻にも必ずと言っていいほど登場する、前向きで強く美しい女性が非常に好感が持てて楽しみです。
厳しい現実に立ち向かう彼女たちの姿に心打たれます。