蒸留をめぐる「推理ノンフィクション」
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タイトルの通り、スコッチウイスキーの技術的、地理的、歴史的、精神的起源を探る考察が、著者の学生時代からサントリーへの就職、イギリス留学時代に至るまでの研究の歩みとともに記述されています。
裏表紙に書いてある通り、あくまでも「推理」なので、著者の専門以外の例えば産業史とか文化人類学とか宗教学などの分野で評価されうる考察かどうかは全く分かりません(そのため蘊蓄にはなりにくい)が、単なる研究者ではなくウイスキーの作り手として研究を進めた著者の気合いと情熱、また知的好奇心の強さが感じられる大変面白い本です。
考察の間に著者の研究史が入っていたり、歴史の話の後に技術の説明が続いていたりと、読みにくいところもありますが、ウイスキーに興味(と多少本を読む習慣)があれば楽しく読める本だと思います。
これは酒を経由した詳細、専門的な欧州民族文明史です。
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酒はワイン少々程度でアルコール度の強いもの(スコッチだけは時々むしょうに飲みたくなるのですが)も、ビールもほとんど飲まないので本来コメントする資格は本来ありません。ただ、本を手に取ってページをめくると止まらなくなりました。まさしく飲食物は文化と歴史の産物ですが、まずそこから徹底的に調査・分析・仮説を論じています。エジプトのエール、ビールからワイン、ジン、ウイスキーと一言で言えない生命の水(蒸留酒)、地中海文明、ローマからケルト、イングランド、アイルランド、スコットランド、キリスト教からゲルマン民族移動、英仏の歴史と酒、ウイスキー生成過程の専門的解説が縦横に行き来します。この歴史的、文化的スケール感と質の高さ、著者のウイスキーを愛すると言いますか取り付かれてしまった心と想い出が内容を実に生き生きとしたものにしています。魅せられたとはこういう事なのでしょうか。この本を読むとむしろ欧州国家の変遷、歴史の非常に良い勉強になります。大お薦めです。
しかしスコッチウイスキーがワインの延長にあること、現在の地位を占めるに至った歴史(オレンジ公、百年戦争、クロムウエル、そしてワインを襲った病虫害、更には気候変動の影響)は興味深く、また蒸留酒は品質のばらつきはないだろうと勘違いしていたことが恥ずかしくなりました。
うすけぼー(ケルト語 命の泉)がウイスキーの語源
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以前行ったレストランの名前が以下の名前で、そこの説明では以下の通りでした。
うすけぼー(Uisqebaughiウーシュクベーハ)とはケルト語で
生命(いのち)の水」という意味、つまりウィスキーの語源。
初めUisqeと呼ばれ、Uskyへと移り、最終的にはWhiskyとなりました。
今も世界中で愛されている 「生命(いのち)の水」。
ウイスキーの技術と歴史、どちらも深く掘り下げた名著
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スコッチウイスキーの起源を求めて、技術だけでなく地理・歴史とも広範にわたり考察を進めていく本です。土屋氏の著作等でよく見る「密造酒を樽に詰めて隠して云々」というレベルではなく、宗教・文化の伝搬もからめながら紀元前まで遡ろうという壮大なお話。中盤まではケルト民族、原始キリスト教、ローマ帝国といったキーワードを元に話を進めるため、“酒の蘊蓄本”と勘違いして手に取ると手痛いしっぺ返しを食らいます。
世界史と酒、どちらも好きであれば非常に興味深い内容ですので、そういった方はぜひ読んでいただきたい。
海外にもない名著
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著者の経験を元に、ウイスキーの歴史を旅する。
スコットランドでの経験とサントリーでの経験に裏打ちされた本で、単なる紹介ものではない。
著者のウイスキーや酒に対する愛情がにじみ出ている。
推理小説と歴史と化学が混ざったような感じで読み応えがあった。
こういう本は海外でも見たことがない。
最近読んだ本の中で最もお勧めの名著。