厳しい冬を生き抜く動物たち。
★★★★☆
“カムイ”と名付けたヒグマの子どもとその母熊を、長期間に渡って追いつづけたドキュメンタリー。ヒグマの子どもは、二匹に一匹の割合で死んでしまう。子グマがいずれ独り立ちできるように、生きる知恵を身をもって教える母熊。しかしある時は厳しく突き放し、数週間も置き去りにしたりする。そんな中でカムイは、自分で獲物を獲ることを覚え、たくましく成長していく。
知床の冬は厳しく、一年の半分を占める。その中で、他の動物たちも懸命な営みを続けている。川で産卵した直後、力尽きてそのまま死んでいく鮭の群れ。それがそのまま、熊たちの貴重な栄養源となる。また、海底で卵を数ヶ月抱きつづけ、孵化していく稚魚たちの姿を見届けて、力尽きてひっそりと死んでいく雄の深海魚。
どの動物もいとしく、感動的でさえある物語を、淡々と語り継いでいる。その押しつけがましくない語り口に好感が持てる。日本にもまだ残されている手つかずの大自然と、その中で生きる動物たちに、畏敬の念を覚える。