苦難の時代を精一杯生きた人たち
★★★★☆
いわゆる「在日」の筆者が、日本軍人として特攻隊に参加し、戦死した朝鮮半島出身者を追ったドキュメント。
近年の韓国でのいわゆる「親日派」法案では、戦前・戦中に日本に協力した人たちの弾圧が吹き荒れているという。これは近代国家としては極めてゆゆしき事態である。その中で、彼らは「国賊」としてタブー視されている。
本書は特定の政治的・民族的偏見に立たず、地道な調査から、その時代を必死で生き、死んだ群像を浮き彫りにする。戦後韓国空軍で活躍した朝鮮人パイロットたち、初の朝鮮人女性飛行士など、あまり知られていない例もとりげられている。
単に日本側でもなく、韓国・朝鮮側でもなく、特定の政治的立場にも立たず、それらのバイアスに疑問を投げかける結果につながる。歴史学が科学的学問である以上、抽象化・一般化は必要だが、あまりにゆがんだ史観は事実をゆがめたり、漏らしてしまう危険が強い。そんな危うさを知らしめる一冊だ。