意匠の人間が楽しめる、最新?構造技術入門書
★★★★☆
コンピュータの発達が建築の構造エンジニアにどのように影響を与えていき、現在それをふまえた上でどのような働き方があるのかを示してくれる。出て来る方々は必ずしも構造家の方ではなく、最後の方ではどちらかというと意匠の方が「テクノロジー」に関してそれぞれの視点から語っている。OMAの重松さんなんかがしゃべっているなど結構意外な感じな人が多い。
そういう意味で、良くも悪くも本書でいう「テクノロジー」という概念は結構、幅が広いものになっている。
最近では、佐々木先生以後、ぱっと新しい構造デザイン=>最適化問題、と考えがちであるがコンピュータの使い方は最適化のみではなく、またデザインの方向性も色んな方向に向く事ができることを本書は示唆させてくれるように思う。と、同時に単なる構造計算だけであれば構造家はもはやいらなくなる時代が来るのではないか?ともリアルタイムで構造の善し悪しを応答してくれるソフトの話しを読んでいて思ってしまった。さらにリアルタイムで計算してくれるくらいの計算負荷であれば、Webアプリケーションとして世の中に普及するのも時間の問題なのかもしれない。
図がとても多く、構造関係のものだけに詳細なものやコンセプト模型などそれだけでもなにかを触発され、意匠側の人間も楽しみ易い構成になっていて、うれしいものだと思う。
佐藤淳さんが、構造計算のソフトは自前でつくっている、しかもカスタムで2,3日でプロジェクト用のものを合間合間で作って仕事で使っていると書いてあったが、世の中はプログラムの知識は最低限必要な方向に進んでいくような気分にさせる。