代わり映えのしない古くさい歌とダンスという、乾燥して淀んだ季節に再度活気を与えるには、カリブの温かい精神以上にふさわしいものはない。そして夏の訪れが近い今こそ、熱心に次の大スターを祝福したがっているこの業界にバルバドス生まれのシンガー、リアーナが切りこむふさわしい時期はない。ショーン・ポール、シャギー、エレファント・マンといった島生まれのマルチ・プラチナのスーパースターたちのお陰で、メインストリームでリズム感のある女性スターがポピュラー音楽の前線に踏みだす環境は整っている。 年季の入ったダンスホールの女王のように、伝統的なレゲエの曲を彷彿とさせるだけでなく、17歳のリアーナは歳に似合わず感情と体験を呼び覚ます力強い歌声を所有している。デフ・ジャム・レコードの社長兼CEOのショーン"ジェイ・Z"カーターと簡単なオーディションを行っただけで、この緑の瞳の美女が巨額の富を生みだすレコード会社との契約を決めたというのも、不思議ではない。このオーディションでの歌が彼女の人生を永遠に変えたわけであるが、素直な性格の島の少女は当時の自分の天真爛漫さを笑い飛ばす。「緊張しちゃって、私のいたロビーは揺れいるように感じたの!」リアーナは健全なバルバドス訛りで語り、当時を振り返る。「廊下でジェイの顔をちょっと見ただけで、"どうしよう!"と思ったわ。それまでセレブには会ったことがなかったから。しかも、そのセレブはレーベルの社長でもあるのよ。ドキドキだったわ!」 幸運にも、リアーナは即興のオーディションを始めてすぐに、不安な気持ちを振り払うことができた。未来のレーベルのボスたちは、彼女をいったんオフィスから帰らせることもなくその場で契約させるだけのパフォーマンスだった。「朝の4時半までオフィスに残って契約を終わらせたの。署名するたびに、とにかく笑顔になってしまって」 バルバドスのセント・ミッチェル行政教区で育ったリアーナは、自分がある日、音楽の一大有力者の会社のオフィスに座ることになるとは思ってもいなかった。2005年にアメリカへ移るまでは、故郷の島でシンプルな生活を送っていた。ハイスクールへ通い、普通の十代の少女と同じく楽しみのために友人たちと歌っていた。学校の美人コンテストで優勝したことを除けば、リアーナは自分にどれだけ才能があるか本当に気づくこともないままに、ニューヨーク・シティの音楽プロデューサー、エヴァン・ロジャーズから注目されたのだった(エヴァンと彼のパートナーのカール・スターケンはクリスティーナ・アギレラ、ルーベン・スタッダート、ケリー・クラークソンといったアーティストのヒットをプロデュースしている)。エヴァンと彼のバルバドス人の妻ジャッキーはリアーナの故郷近くでクリスマスの休暇を過ごしていた。そして共通のな友人を通じて若いディーバを紹介されたのだった。2曲ほど彼女の歌を聞いたエヴァンはリアーナの未来のスターとしての実力に気づき、何曲かレコーディングしてみるようにとニューヨークへ招待した。 リアーナ、エヴァン、カールは最終的に12曲の歌をレコーディングした。3人は力を合わせ、リアーナの豊かな音楽文化に散りばめられているダンスホールやレゲエからインスピレーションを引き出し、フレッシュなR&Bのソウル・サウンドを融合した。リアーナはこのミックスされた音を、好物のカリブ料理のキャラルーになぞらえる。「ガンボやシチューに似た料理なの」リアーナは説明する。「私の音楽はR&Bをミックスしたカリビアン・ビートが基本。ありきたりなダンス・アーティストに仲間入りする若い女にはなりたくないの。私だってちゃんと歌えるからよ」 リアーナのデビュー・アルバムは音楽の魔法を生みだす材料をすべて使っていることが約束されている。彼女が影響を受けているビヨンセ、アリシア・キーズ、マライア・キャリーのように、リアーナは才能のあるソングライターでもあり、本作で何曲も共作している。「音楽は私のDNAに含まれているの!」輝く目のシンガーはそう語る。ファースト・シングルの「Pon De Replay」は心を浮きたたせるリアーナのヴォーカルで世界中のダンスホールを沸かせることは確実、DJたちは聞こえる範囲にいる人すべてに届くまで彼女の曲を繰りかえし流したくなるはずだ。エレファント・マンとヴァイブス・カーテルの両者をフィーチャーした曲では、国中のラジオでもクラブでも熱狂の渦が巻き起こることをリアーナは保証している。 リアーナは確かにシンデレラの物語を現実のものにした。「エヴァン、そしてカールに出会わなかったら、私は永遠に夢を見ていただけだったわね」リアーナは振り返る。「2人がしてくれたことすべてに、感謝しているわ」。じきに全世界がリアーナとプロデューサーたちの両方に感謝するようになるだろう。