アメリカの歌心
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今作はアメリカンミュージックである、ジャズとカントリーの代表格とも言えるウィントン・マルサリスとウィリー・ネルソンのコラボレート作品である。 こんな渋くて素敵な音楽を夜更け過ぎのクラブで演奏されたら堪らないだろう。その場に居合わせた人達が羨ましくてならない。 ウィリーが歌い、ギターを奏で、ウィントンがトランペットを吹く。音を文字で表現するのは難しいが、例えて言うなれば一般的な日本人が映画の世界などから想い浮かべる、ニューオーリンズ辺りのバーで毎夜繰り広げられている宴をステージで盛り上げている様なミュージックだ。 どうだろう?想像して頂けただろうか?ディズニーランドのウェスタン地区にも流れている「それ」である。 ともかく、演歌が日本的なミュージックだとすれば、彼らの音楽もまた、流行を超えたアメリカンミュージックなのである。 とにかく楽しもう!
現代のライブ音源の意味とは?
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DVDのLive from Jazz at Lincoln Centerより数ヶ月前に出されたのが、このCDです。歌詞もライナーノーツもなく、ブックレット等のデザインもシンプルにとにかく中身の音を聞かせようという正統派のものです。耳を澄ましてみると、音の奇麗さはもちろん各自のソロの演奏も曲の構成が決められている中で自由な解釈でスウィングしているのが聞こえます。曲の間の絶妙なつなぎもあってか、53分という時間の中で客席から固唾をのんで各自のソロや曲が終わるのを待って拍手で迎えるというライブでの緊張感と快感が伝わってきます。一曲だけつまんで聞くのではなく余裕を持って全体を聞くべき素敵なライブです。
ライブで起こっていることだけを収めたこのCDと、興味深い舞台裏まで網羅したDVDと、どちらがよいのか?
私のようにDVDから先に入ってしまったら、ステージの様子やこの舞台設定の物語がもう脳裏に刻まれているからCDの魅力が半減します。まだ耳にしていない人はぜひともCDから先に、うかつにもDVDが先だった人はブランデーグラスをくゆらせるようにCDの音で余韻を楽しみましょう。
今度のグラミー賞取るのでは?
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ジャズとクラシックのトップトランペット奏者ウィントン・マルサリスとカントリーミュージックの人間国宝的存在のウィリー・ネルソンの共演という、普通なら思いつかない企画です。しかし考えてみれば、ウィリー・ネルソンは、以前からカントリー仲間のメール・ハガートやフレディー・パワースらとナッシュビルのステージでスイングジャズの曲を演奏していましたし、自らもオール・オブ・ミーなどのスタンダード曲ばかりを歌ったアルバムを出しています。黒人のゴスペルやブルースがジャズの要素を成したように、カントリーミュージックも白人のブルースのようなものでジャズとの融合がなされており、事実、ディキシーランドジャズはカントリーミュージックと共通するところがあります。前置きが長くなりましたが、こんなに楽しく、ほのぼのとした、且つ深みのある作品はめったにないでしょう。共演者二人がお互いをリスペクトし合いながら、楽しそうに、なごやかに演奏しているようすが目に浮かびます。1曲目のBright Lights Big Cityでは、早速ノリのよい演奏で後に続く作品をワクワクしながら期待してしまいます。Caldoniaはウッディ・ハーマンの演奏がポピュラーですが、これまた自然と足で床を踏み、からだが動いてしまいます。Stardustは今まで数え切れない数の録音がありますが、その中でベストになるでしょう。Basin Street Bluesはディキシーブルースの雰囲気がすごく出ていて渋いなあと関心させられます。My Bucket's Got a Hole in itではウィントンも歌っていますがなかなかいいです。という具合にどの曲もうならされる出来です。音楽のジャンルを超えたアメリカンミュージックの真骨頂です。是非購入してください。