渾沌から抜け出たマイルス
★★★★★
1981年に6年の沈黙の後復活したマイルス。復帰第一作の『The Man with the Horn』→『We want Miles』→『Star People』とつながり本作は復帰第四作目。1984年に発表されている。
1981年と83年の来日ステージではマイルスの体調・健康状態が完全復活していないのは誰が見ても明白で、ファンは1973年の交通事故や1975年来日時の舞台での怪我の後遺症、そしてあの嵐のようなジャズ・ファンクの渾沌のエナジーですり減らしたであろうパワーの減退を心配したものだった。
その中でこの第四作は前作『Star People』とメンバーの変更はないがマイルス自身がプロデュースにあたっている。シンセのロバート・アービング3世をコ・プロデューサにすえ、曲目7曲のうち、1曲がアービングとマイルスの合作、2曲がアービングのオリジナル、3曲がジョン・スコフィールドとマイルスの合作、4の『Freaky Deaky』(ここではマイルスはトランペットを吹かずシンセのみ演奏している珍しいナンバーである)だけがマイルス1人のペンによるものである。
このアルバムからマイルスの体調が復活したことをまず感じる。深い深い渾沌から抜け出たマイルスはミュート・ホーンでまず表題曲『Decoy』を奏でる。アドリブ・ソロは延々と続く。そして次の『Robot415』の短い間をはさんだ後、『Code M.D』で又元のセプテット構成に戻り、今度はオープン・ホーンでソロをとる。素晴らしい演奏である。真の意味の復活には3年を要した。深い深い渾沌から抜け出たマイルスの最初の傑作である。