アメリカ合衆国におけるコンピュータ倫理学の第一人者と言われているとおり、著者のデボラ・ジョンソンは、コンピュータや情報技術に関する倫理的諸問題を簡潔に、しかも洞察力に富んだ内容で読者に紹介している。彼女が扱う問題はハッキング、プライバシー、所有権など実に多様であり、このことだけでも「うーん。そんな問題があるのか」と!勉強になる。
さらに本書のよいところは、読者が実際にいろいろな問題を批判的に考えるように促すことだと思う。私は本書を読んで、「なるほど、そんなに簡単な問題ではないわけね」といろいろ考えさせられた。コンピュータや情報技術が身近になればなるほど、それらに関係する諸問題について「どうすべきか」を考えていく力が必要になるのではないだろうか。その力を涵養するには、本書が役に立つであろう。