鉄道は続く どこまでも 圧巻の鉄道の旅 魅惑のシルクロード
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紀行作家の芦原伸さんが63歳、カメラマンの堀瑞穂さんが67歳、二人併せて130歳のコンビでシルクロードの鉄道の旅は始まりました。ローマから奈良まで59泊60日、30列車を乗り継ぎ、14カ国を通過したわけで、鉄道マニア、旅好きにはたまりません。羨ましいですし、よく頑張りました。
国情の不安定なエリアを通るわけで、イラン・トルクメニスタンの国境が封鎖されていたのが、出発の1か月前に解除されるなどの幸運もありました。一方、2009年7月の中国・新疆のウィグルでの暴動事件のさなかにこの旅はスタートします。まさしく前途多難です。
波乱万丈とは大げさですが、アルマトイからウルムチでの検問所の厳しさは、世界の情勢がストレートに反映してあるルポとなりました。この沿線の風景の写真がこれだけムックとして残されるのは貴重ですし、これからもなかなか難しい状況が続くでしょう。それだけ価値ある旅だと評価しています。
ローマではスリの被害にあうし、ブルガリアのソフィアでのスリ集団の手口は巧妙です。旅を続けるのは危険と裏腹というのをいきなり証明していました。
途中サマルカンドあたりで筆者もカメラマンも病気になります。「クルシロード」と言い換えていますが、それでも旅を続けるわけで、根性と体力がないと完走出来ない旅でもあります。鉄道を乗っているだけで気楽なものだとは絶対に思えません。洛陽から北京のあたりの混雑と混乱ぶりからは悲壮感が漂い、それは一緒に旅をした思いの読者にも伝わりました。
途中スキップした北京・平壌間も後日出直し取材で25時間をかけて乗っています。北朝鮮の駅や鉄道の写真はよく撮れたものですね。オールカラーで、それぞれの国の鉄道事情や観光地、駅や列車内での人々の姿がふんだんに写されています。文章もいいですが、写真の珍しさは輪をかけて素晴らしいと思いました。価値ある出版だと思います。