ブラックの極み
★★★★★
このシリーズは全3巻出ています。後味の悪い作品もあるので好みははっきり分かれるでしょうが、どれも素晴らしい内容だと思います。内気な少年の心の成長を短編で見事に表現した「万年青」が大好きです。若さに似合わぬ観葉植物鑑賞という趣味を持つ少年の夢は、理想の“万年青”を栽培し、青春光と名づけることだった。栽培は順調に見えたのだが…。予期もせぬ裏切りと失望、しかし、ラストに射すのは希望の光…!他にも、怪奇趣味あふれる「不気味な五週間」シリーズ(“目のない舞姫”は泣けます)、ある家庭の日常に侵入してきたヒットラーそっくりの招かれざる客「ひっとらぁ伯父サン」、マグリットの絵に魅入られ強迫観念に取り付かれた男の破滅を描いた「マグリットの石」、ある男が恐るべき方法により愛する女性を自分だけのものにしようとする「水中花」など傑作ぞろい。引きこもりを予見した「明日は日曜日そしてまた明後日も…」や、ストーカー問題を先取りした「暗闇から石」などの先見性も見逃せません。*これらがこの巻に全部入ってる訳ではありません。