これは素晴らしい!
★★★★★
皆さんが書いているようにこれは傑作だ!喉癌を乗り越えたLEVONの本当に素晴らしい作品だ。どの曲も聴くべき価値のある曲だ。DONT DO ITを歌っていたころLEVONとは確かに声も衰えている。擦れている。しかしこのアルバムは今のLEVONの声が最良の歌唱を聴かせてくれる。これは各メンバーの出したどのソロアルバムより見事だ。40年の時を経た地下室の続編のようだ。深い。とにかく深い。今このアルバムが聴ける幸せを感じる。
最後のボーカル
★★★★★
レヴォン氏が咽頭ガンになって、声が出なくなったと噂を聞いていたので、
今回のアルバムを聞いてホットした、昔のようなパンチの有る声では無いけど。
古き良きアメリカを感じさせる、アルバムでした。
去年は、お金に困って、寄付を求めていたみたいだけど、
このアルバムが沢山売れて、レヴォンの為になると良いね。
Across the Great Divide
★★★★★
最近の諸作では、The Midnight Ramble Music Sessions, Vol. 2の"Battle Is Over but the War Goes On"が再生?リーヴォンの嚆矢かと思っていた。演奏が終わり、ステージ上の"決まった!"という空気がこちら側に心地よく伝播される。しかし、そこにさえ主役の抱える健康上の不安は見え隠れして、退院後加療中といった重苦しさを払拭できずにいた。本アルバムジャケットのセピア色の画像では事の成り行きが読みきれず、実は購入には二の足を踏んでいた。まれびと氏のレヴューにハッとして急いで購入、謹聴した。いきなりのタム2発は往復ビンタのようである。"しっかり聴けヨ"てな感じ。S.アール作3のイントロでフィドルが厳かに響く頃には、すでに没我状態。全てがよい方向に運んだのだ(ろう)と安堵する。ホームメイド録音というときの甘さなどかけらもない確実・着実な音。そこら中にばらまかれているギミックに満ちた音どもが顔を赤らめて退散しそう。10の冒頭のカウントの楽しげなこと。J.B.レノアーの12では、ズバリ"Feelin' Good"と繰り返される。そしてB.ミラー作のラスト。当方おセンチに音楽を聴く者ではないが、先に失われてしまった聖なる2つの声が現れては消え不覚にも胸が詰まった。越えられないはずのものがいくつか更新されたのではないだろうか?
数回聴いただけの印象では心許ないので、蛇足を承知で追記する。(2008/1/4) まず、いずれオーディオ誌などで指摘されるだろうが(現時点ではされてない?)本盤が非常な高音質盤である点。できるかぎり大型のスピーカーで聴かれたい。1、2などトラッド・ソングでありながら、臆病な子供なら泣き出しそうなタイコの音。ただならぬリアリズムを感じる。3はスプリングスティーンのライヴ・イン・ダブリンを連想させ、ともにアイリッシュ・ミュージックの底力を思い知らされる出来だが、(ピート・シーガーなどと限定せず)汎アメリカンミュージックを自在に操った点、また小編成を利した点でここはリーヴォンに軍配をあげたい。いわゆる南部ロック的なものは6くらいで、ほぼ丸ごとさらなるルーツへと深化していることに驚く。この点でもBSの新盤(未聴ながら)は本盤の前にやや分が悪いのでは? もちろん、バンド(ザ・バンドではなく)が眼前に現れるというような(音場型の)録音ではないが、滲み・掠れ・誇張などのないヴォーカル群、(良い音の)楽器がピタリと定位するのが気持ちよい。特に、音数の少ない8、12などにはドキリとする。飽きさせない構成も上手いと思うが、案外翳りがなくアッケラカンとしたこのような楽曲に、復調したリーヴォンの真骨頂があるかも知れない。とまれ、こんな夕餉と宴がまっているのなら、日々泥まみれの労働もまた楽しいのではないか。聴くべし!
感激!!!
★★★★☆
正直言って、びっくりするくらい予想以上に素晴らしいアメリカーナ。
トラディショナルソングを主に用いながら、Levon特有の粘りのある骨のある声と、どこまでも続くような深いアメリカンルーツが見事に融合している。
もっと緩い音楽になるのかと思っていたが、良い意味での開放感とシビアな音作りがバランス良くバンドの一体感、安定感も抜群。
アメリカンルーツを支えてきた男ならではの芳醇な大陸の香りは、音楽が好きであればあるほど、堪らないはず。
本物!!!
大いなる音楽の源流
★★★★★
ザ・バンドのアルバム「Stage Fright」(1970)に入っている All La Glory という曲が、ひそかに好きだった。リヴォンのボーカル曲だが、頼りなげな、教会の懺悔室に入った少年の告解のようなその声は、あまりリヴォンらしくない。今回の新譜 Drit Farmer は、どこかそんな手触りに似ている。ザ・バンド以外のリヴォン・ヘルムの演奏といえば、ウッドストックに御大マディー・ウォーターズを迎えた The Muddy Waters Woodstock Album と、ドクター・ジョンやMG’S らと組んだ Levon Helm & the RCO All Stars を持っているが、ザ・バンドを離れたリヴォンの曲はどれもリズム・アンド・ブルーズを基調としたもので、かれの伸びのあるアメリカ的なシャウトと相まって、どこか単調になりやすいきらいがあったことは否めない。ところが今回のアルバムは装いが異なり、まるで別人の作品のようだ。収録された全13曲はどれも相当に古いトラディショナルな曲か、それに準ずるものだ。エレクトリックな楽器はほとんどない。アコギとマンドリン、フィドル----そのほとんどをかつてディランのバック・バンドにいたラリー・キャンベルが担当している。このアルバムにおけるかれの貢献度は大きい----オルガン、ピアノ、それに娘のエイミー・ヘルムを加えた二人の女性シンガーがリヴォンの声をサポートしている。リチャードやリック・ダンコとザ・バンドを再結成した頃はまだザ・バンドの影を追っていた。だがリチャードもリックもこの世を去り、一人残されたかれはとうとうザ・バンドの影を拭い去った。喉頭癌で一時は二度と歌えないかと思われた声は、内なるルーツに帰還する。以前のような張りを失った、かすれがちなその声は、皮肉のようだが、その帰還に相応しい。声の制限が深度に作用したのだ。わたしにはそう思える。何よりこのアルバムに収められたすべての作品には、深い敬虔な感情と、豊かな音楽の息遣いと、家族的な親密さからしか生まれ出ないある種の力強い愛情が脈打っている。よくなめした皮製品や手入れの行き届いた100年前の古い家屋のような味わいがある。そうしてよく耳をすませば、これらの作品のふとした瞬間に、わたしたちはあの雄壮な The Night They Drove Old Dixie Down や、自由な麦畑の Ain't No More Cane の原液を嗅いだような酩酊を覚えるのである。リヴォン・ヘルムは、ザ・バンドの“聖なる三つの声”の残された最後の一人なのだ。その声はいま、いくつもの川筋をたどって、大いなる音楽の源流にいる。