この作品のラストは、個人的なランキングで、アーシュラ・K・ル・グィンの「所有せざる人々」と並んでベスト1である。~星界に今潮が満ちる~なんて素敵な言葉だろう。でもそれは、思考がイルカ流になっているからなのだ。主な登場人?物(登場アースリング)は、イルカである。ブリンの作品は不思議だ。自分が嚢環の集積体であったり、巨大なクモであったりすることを想像せざるを得なくなる。そういう意味では、自分がイルカであると想像する本書のハードルは、そんなに高くないのかもしれない。だが、最初は結構疲れた。海洋哺乳類の思考パターン、行動様式を前提にストーリーが展開する。
私の知り合いのSFファンはこの時点で挫折した。しかし、このイルカたちのなんと魅力的なことか。クライダイキー!の超イルカ的資質、キーピールーの超絶ドライヴテクニック、そして悪役タッタカ・ジムの秘められた出生。いつのまにか自分はイルカの世界からものをみている。
なんとかここを乗り越えて、イルカになりきり、最後の『ハイク』を味わってほしい。人間になんかかまっていられない。スペースオペラここにあり。