抽象絵画のよう
★★★★☆
高架下建築へのアプローチは、多彩な方面から出来ると思いますが、
私の場合は、その巧まざる芸術性に惚れ惚れします。
まず、無造作に塗り重ねられた壁のペンキが
まるでマーク・ロスコの絵画のよう。
そうしようと狙っているわけではない
無為の営みの中でできあがったものなので
あざとさがなく、ただ美しい。
そして、窓、ドア、郵便受けなどの方形のコンポジション。
絶妙の余白。
作品として狙って制作されたものでない美しさ。
巧まざる美という点では、工場の複雑かつ整然とした配管の美しさと通じるものがある。
(キレイなものを美しいとする一般的な美意識からすると、そうは感じない方が多いかもしれません)
これらの興味深い高架下建築写真を収集した作者に感謝。
しかし惜しむらくは、写真集としては本のサイズが小さい。
従って、写真も迫ってくる臨場感がやや足りなくなっているので
評価は星4つです。(でも被写体の面白さは星5つ)
林立するビルの裏側や
隣のビルが取り壊されて現れた
知られざるビルの側面の造作などに興味のある方にも
いいと思います。