ポンポンポンポンッ!路面軌道を走った焼玉エンジン機関車!,
★★★☆☆
地方私鉄を中心とする内燃機関車両のプロの湯口さんが、戦後生まれの私鉄機械式気動車、日本の蒸気動車に続いてRM LIBRARYにまた面白い題材をまとめてくれた。
明治時代、大阪で鉄工所を経営していた福岡駒吉は客貨車を町工場的に製造していたが、馬車鉄道の馬の代替として、また軽便鉄道の簡易で安価な動力車として、独自の「焼玉エンジン機関車」を考案、製造に乗り出した。
この通称駒吉機関車は、安価な代わりに非力(最高出力7馬力!?)でしかも故障が多く、交換用予備機や予備部品を沢山用意するデメリットがあったものの、簡単な構造ゆえ故障しても技術の未熟な地方鉄道の工場でも簡単に修理できたという。書籍だから当時の実車の走行音はわからないものの、焼玉エンジンだから「ポンポンポンポンッ!」とさぞ威勢の良い音をリズミカルに立てて走っていたのだろう。寸詰りのタンク式蒸機のようなデザインのその機関車は、前面は煙室扉ならぬ観音開き扉で、中に駒吉独自の焼玉エンジンと変速機を置き、マッチ箱客車や二軸貨車を牽引して主に九州の路面軌道を怪気炎(煙?)を上げて市街地を行き交っていたという。前部にはカウキャッチャーならぬ路面軌道ならではの救助網と、豚足(!?)のような連結器に、キャブ前面は不思議な横長ひょうたん型の1枚窓・・・、
「これってヤッターマンの『おだてブタ』!?」というのが私の第一印象(失礼!)。
湯口氏によると、蒸機が石炭の替わりに石油を燃した機関車でなく、この機関車が国産初の本当の石油内燃機関車であるという。この通称駒吉機関車の誕生からその後の活躍、終焉までの歴史、またその構造や運用を、明治の少ない資料から発掘して解説する。とにもかくにも湯口氏いわく「100%日本オリジナルメカニズム」の破天荒な珍機関車。たまには正統派鉄道(?)から大いに脱線してこんな機関車の話も楽しい。
ただし、本文中、明治〜大正の古い地方鉄道名や軌道名が沢山出てくるが、どこにあったどのような鉄道かはほとんど書かれていないので、これらの古鉄道の概要を知りたい場合は、ネットや別の書籍などで調べる必要がある。