ディザスター・ムービーではなく、甘いラブストーリー…
★★★☆☆
「ポンペイ」という原題通り、映画の中心は、古代ローマのポンペイ消滅にまつわる物語である。
ただ、ディザスター・ムービーだと思って観ると、物語の主題は明らかに古代ローマとそして現代にも通じる普遍的な人間性、すなはち男女の恋愛という「ラブストーリー」にあるようだ。
ベスビオ火山の大噴火に伴う文明と都市の消滅という人智を越えた「運命」に、人間がどのように立ち向かい、そして、どのようにその「運命」を受け入れるのかという大テーマが、残念ながら甘いラブストーリーによって、薄められてしまったように思う。
また、ポンペイの物語を想起する切っ掛けとなる、現在の火山状況を調査する科学者と女性をめぐる恋愛話も、何だか取って付けたような話なので、むしろ、無い方が良かったかも知れないと思う。
ディザスターパニック・ムービーは、人間の勇気と知恵が災害を乗り越えるというテーマのものが多いが、実際にはそのようなことは稀だろう。
圧倒的な自然の驚異のなかで、一人一人の人間が如何にその運命を受け入れて行くかという、東洋的なディザスター・ムービーを観てみたい気がする。
助かることを目指すのではなく、賢明に「運命」を受け入れようとして「生きる」人間の姿を描いた映画は出来ないのだろうか。真のディザスター・ムービーとは、そのようなものではないだろうかと、この映画を観て思った。