このシリーズの本がなにより素晴らしいのは、まさに「手に取るように」ナーゴという世界が想像できること。「ナーゴ」というのは作者の作り出した架空の国のはずなのに、読んでいくうち、本当に地中海にはこんな国があって、今も猫たちがひなたぼっこしながらゴロゴロしてるんじゃないだろうか、と思えてくるのです(実際、作者は一度もナーゴが架空の国だと明記していないんですよ。だから余計にややこしいんですが)。
作品中に出てくるナーゴの人々は、いつでも穏やかで陽気で、心の広い人ばかり。なにより、自分の飼い猫を、町中のノラを、心から愛しているのです。猫好きが固まるとこんな国になるんだなぁ、と変に感心することもしばしば。トマトソースが好きで口が赤く染まった猫に、笑いながらランチをお裾分けするなんて、今の日本じゃ考えられないほのぼの風景。
猫在住の病院も、世界でここだけでしょうね。
猫好きはもちろん、旅行が好きだという人、一人旅をしてみたいという人にもお勧めの本です。この本を手に取った瞬間から、貴方は猫町ナーゴの虜になるでしょう。
もちろん、本当にある国ではありません。でも、まるで本当にあるかのような描写の優しさと細やかさ。ほんっと色んなネコがいます。
例えば、高いところが好きだけど降りれなくなって、通行人に飛び乗って降りるネコ。
例えば、ビニール袋1枚でずっと遊び、最後にはビニール袋をゆりかごとして寝てしまうネコ。
例えば、ソーセージが大好きで、転がしたりはじいたりと遊んでから食べるネコ。
例えば、ぬれ甘納豆みたいなおいしそうな肉球をしているネコ。
ああ、こんな国があったら移り住むね、ほんと。