細やかで、ささやかな物語
★★★★★
ベンガル人、あるいはベンガル系アメリカ人(で、いいのかな?)にまつわる、9編からなる短編集。
著者は英国生まれ、カルカッタ出身のベンガル人を両親にもつアメリカ人だそうです。
どの話も、平凡な人々の、ささやかな日常の心の動きをつづった物語です。
ドラマチックな展開はないのだけれど、深い印象が残りました。
英語の表題作「Interpreter of Maladies」は第3話。
インドに観光旅行に来たインド系アメリカ人の一家と、彼らの案内をする観光タクシー運転手の期待と失望にまつわる話。
(蛇足ながら、下についてる邦題「停電の夜に」は第一話「A Temporary Matter」のことです。ちょっと紛らわしい)
最終話「The Third and Last Continent」が個人的には一番好きです。
インド、イギリス、アメリカと渡り歩いた男性が、最後の大陸アメリカに根を下ろしていく過程をつづった物語です。
異国で暮らした経験を持つ人ならば、ここに書かれた心情には共感する部分も多いのではないでしょうか?
英文は読みやすいほうだと思います。
たまに難度の高い単語あり。
ただし講談社版は、巻末に注釈がついているのでちょっと安心?