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ヴォルテールの世紀 精神の自由への軌跡

価格: ¥4,620
カテゴリ: 単行本
ブランド: 岩波書店
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大西洋文明と啓蒙主義の成立 ★★★★☆
 十八世紀のフランス啓蒙主義の全盛期、マルセーユは一大奴隷貿易港で、奴隷貿易業者たちがフィロゾーフたちのパトロンであった。同時期、リバプールやブリストルも奴隷貿易港で、E・バークは奴隷貿易業者たちの支援を受けて政治活動をしていた。同時期、ボストンも一大奴隷貿易港で、大西洋を奴隷船が行き交いアフリカからニグロたちを南北両アメリカ大陸に運び、その新大陸を奴隷の使役によって開墾し、砂糖、コーヒー、棉花、米などを栽培させ、それらが技術革新と資本制生産を組み合わせて成立した産業革命の原材料であった。
 フィロゾーフたちは、人類の解放のために奴隷制の廃止を主張した。かれらは〈黒人友の会〉を作った。この会は、イングランド、フランス、アメリカ合衆国、カリブ海域を結ぶ国際的な半宗教組織であった。
 十九世紀に入って、イングランド議会は、ひとまず奴隷貿易だけ廃止した。1807年のことであった。そのあと、南北戦争によって、アメリカの奴隷は不充分ながら法的に解放された。この時期、K・マルクスが『資本論』の最終卷をロンドンで書いていた。かれはこのアメリカ内戦が人類史を左右する戦争になると書いた。ヒューマニズムはさまざまに誤解されていることばだが、西欧の文脈では、なにより「人類全体の運命を考える思想」という意味である。『百科全書』には、「人類」という項目があった。マルクスは、人間は類的存在であると書いた。
 アジアに、南北戦争、つまり、人類のために戦われた戦争などかつて一度もない。我々は儒教圏に生きている。儒教に興味があるのは古代から政治権力の争奪だけだ。日本国憲法には人類ということばが入っているが。 
 以上を背景知識とすれば、『ヴォルテールの世紀』は大いに楽しめた。 冬川 亘。