ロマン派の作曲家の中でも、最もロマン派らしい作曲家はシューマ
ンだと思われますが、その憂愁を馥郁とした響で再現した名演です。
この演奏を残響過多とする人もいますが、深々とした透明な響で歌
われる演奏を聞いてからは、過去の名盤とされる多くの録音も、ど
うしても平板な演奏としか感じられなくなったものでした。
スウィトナー氏の訃報を聞きましたが、病気で引退するまでは何度も
来日され、モーツァルトやブラームス等の、数々の名演奏を聞かせて
いただいたことに、深く感謝をするものです。

当ディスクは、オトマール・スウィトナー指揮、ベルリン・シュターツカペレ演奏による(1986年デジタル録音)、シューマン交響曲全集から、第1番《春の交響曲》と第3番《ライン》を収録したものである。レコード芸術推薦にも殿堂したのであるが、大変スケールが大きくて叙情豊かに歌い上げられており、それはまるで、大海原を大船で突進んでいるようだ。実にクリアで気持ちいい。シューマンの交響曲は全部で4作あるが、いずれもメンデルスゾーンと並んで、ドイツロマン派音楽の色彩豊かな叙情性に満ちた作品だ。第3番《ライン》の第3楽章なんてもう、天上の楽園にいるとでもいうべきほどの美しさだ。

この時代（１９８６年）のベルリン・シュターツカペレは、素朴な感じのドレスデン・シュターツカペレと比べて、洗練された音色とハーモニーを感じさせてくれます。スウィトナーのアプローチは、優美さと温かさ、人間的な優しさの様なものを感じさせ、カチッとしていてドイツの正統派的なサヴァリッシュの演奏と好対照であると思いました。デジタル音源でこの値段は安いと思います。

「春」が第１稿を使用してるのも面白いが、それを省いても充分存在価値のある名演だと思う。ベルリンシュターツカペレの美しい響きを活かし、決め所はしっかりと押さえ、シューマンのロマンをたっぷりと聴かせてくれる。ただ、残響が少し効きすぎている録音が気になる方はいるでしょう。