狭い日本ゆえの風景画ともいうべき秀作!!
★★★★☆
ほのぼの、である。
ひとが1年普通に生活をする中で、「ほのぼの」という会話が何度出てくるだろうか。
そんなふうにふと思う。
「一般」だから感じる集団の中の同一化。
庶民という意識の中でこそ芽生える生活の風景。
テーマは「中」だ。
どこか幸せというにはほど遠くて、「そこ」にいられる幸せを他人と対比してこそ感じる風景。
この本の表紙がすべてを物語っている。
どこか帰りたい。還りたい。
ほんの少し心に空洞を感じる俗にいういいところのおぼっちゃん、おじょうちゃん以外に
超オススメ。
郷愁という名の人生グラデーションに魅かれてまた読み直しちゃうんだよなこういう風景画は。
人の数だけ人生も、秘密も、ある。
★★★☆☆
時代から置き去りにされたような古い団地が舞台。
人には言いにくい秘密を抱え、孤独に生きる人々の触れ合いを描く連作短編集です。
寂しいから誰かとつながっていたくて、時には集まってささやかなパーティを開いたりはするけど、
本当に誰かの話に耳を傾けて真剣に向き合っているわけではない。
ただ孤独を埋め会っているだけに思えたこの人たちにこんなに心温まるラストが待っていたとは!
暗い話になるのかなと思いきや、意外な方向へ進んでいった構成が素晴らしかったです。
「同居の家族・・・いっぱい」
まだ心からつながっているわけではない、でもつかず離れずな関係だから心地よい。
彼らはこれからどんどん良い方向へ進んでいくのでしょね。
もっともっと本当の家族へ・・・。
郊外の寂れたその団地には、人情があり温かい人々がいた
★★★★★
■高度経済成長期に立てられ、寂れてしまった郊外のニュータウン。そこで暮らす人々を描いた連作小説集である。
■第1話は絵里が主人公。彼女は大学を卒業し、準大手出版社の事務職として就職、普通に暮らしていた。だが、母がガンで入院し3年後他界。父は治療費のため大きな借金を背負い精神変調をきたして自殺した。絵里の生活も行き詰まり、途方にくれる。そんな頃、中学時代の同級生・朱美に誘われキャバクラで働き始めた。だが、泡の様な金が入るようになると、ブランド物の買物依存症になり新たな借金地獄に陥る。絵里は、朱美の暮らす郊外の古い団地に居候することに。ただ朱美は粗忽者で、男と温泉に行く、3日くらいで戻るといいながら5日たっても音沙汰がない。食糧は底をつき、金もない。孤独と絶望感とひもじさでいっぱいになったとき、2階のおばさん塚田里子が肉ジャガを大量に持ってきた。ありがたくて涙ぐむ絵里。そこに、朱美がノホホンと戻って来て、めでたしめでたし。
■第2話は朱美の事情と彼女の父のことが描かれ、第3話では肉ジャガおばさん・塚田里子の孤独が明らかに。皆それぞれ様々な問題と地獄を背負って生きていた……。団地の有志が集まり、絵里の借金対策で知恵を絞る描写もある。
■作者は、現代社会が置き去りにしてしまった人情や温かい機微を、寂れた団地を舞台に味わい深く描いた。
面白かったです!
★★★★☆
柴田よしきさんの最新作です。
今回は【家族】をテーマにした6つの短編とエピローグで構成された連作集です。
借金まみれのキャバクラ嬢、猫の集会を探し求めるカメラマン、
夫が死んだ日のことを忘れられない未亡人…etc
それぞれの人物の描写が巧みで自然に物語の中に入って行けました。
連作集ですが、短編としても楽しめ、奥が深い作品に仕上がっています。
1人1人の孤独・寂しさの中でも、何故かしらこの団地に暮らす人と人との繋がりで、
どこかほっとする優しさ・安らぎを感じられて読後感も良かったです。