与えられた場所で戦うということ
★★★★☆
ハノイ周辺の地上攻撃にかかわってきた、F105サンダーチーフのドライバー(パイロットと言わないみたいです)の回想録です。
ベトナム戦争を政治的な側面から分析した図書はデビット・ハルバースタムの「ベスト&ブライテスト」であると思ういますが、そこでは「空爆による効果は限定的」という立場をとっています。
前線で戦う男たちにとって、与えられえた場所で最善を尽くすしかないのは、古今東西同じであるしようが、この戦争ではあまりにも馬鹿げた政治的な制約が多すぎた。ケネディは軍部の独走、エスカレーションを恐れたが、ベトナム戦争の本質を理解していた。彼が暗殺されることによりベトナム戦争は迷走し現場は疲弊したと思う。
戦闘の描写も面白いのですが、この本で著者が言いたかったのは、最後の1行に象徴される、「空軍の歴史の中で ビリーミッチェル」
ビリーミッチェルは戦略空軍の創設者であるとともに、軍の官僚主義に対し公然と戦って軍事法廷で統帥権侵害で裁かれた。彼の伝記は映画にもなり、ゲーリー・クーパーが主演した「軍法会議 The Court Martial of Billy Mitchell」という映画にもなった。
著者は空軍を信じ、官僚主義と戦ったビリー・ミッチェルを自分と重ね合わせたのだろう。非常にさわやかな読後感であった。
それにしても、ベトナム戦争にあっても通信の進化によりover headの管理部門が多くなりすぎたという弊害は、わが身を振り返っても良くわかる。