『インディ・ジョーンズ レイダース 失われたアーク《聖櫃》 [DVD]>』等
の脚本家として知られるフィリップ・カウフマンが、トム・ウルフのノンフィ
クション『ライトスタッフ』を原作に、60年代アメリカの宇宙開発の裏側を
叙事詩的スケールで描いた大作。日本初公開時は、約160分にカットさ
れたが、これは193分のオリジナル全長版。

カウフマンは、ドラマチックな題材を大仰に描かず、控えめに淡々と描い
ていく(時としてはユーモアを交え)。米ソの宇宙開発競争の政府の滑稽な
加熱ぶりと、それとは無関係に、宇宙飛行士たちの、ただ｢高く飛びたい｣
というアメリカ人らしい無骨で、誇り高いフロンティア精神の対比もおも
しろい。

男臭さをプンプンと放っている演技陣が素晴らしい。7人の宇宙飛行士もそ
れぞれの個性を出していていいが、なんと言っても、学歴から宇宙飛行士に
選ばれなかったチャック・エイガーを演じたサム・シェパードの孤高ぶりが
印象に強い(はにかんだ笑顔もいい！)。マーキュリー計画を尻目に、一人黙
々と｢さらなる高さ｣を追求していく彼の姿は、まさに男のダンディズムその
もの。彼の乗る高速ジェット機が、厚い雲をつき抜け、一瞬、無限の宇宙が
顔を覗かせるシーンは、涙なくしては観られない美しい名シーンである。

余談だが、チャック・エイガー本人も、バーテン役で特別出演している。

本DVDの画質は、リマスターにより、既発売のものより、随分と画質が向上し
た。そして、それ以上に、何より、既発売盤の両面1層というドラマを分断し
てしまう仕様が改善されたことが嬉しい。