小説家にとって持つべきものとは、天然の悪友なのか
★★★★★
賭博の胴元、ボクサーの元締めに、犬猫学校のチェーン展開・・・常に頭の中で次なるEnterprise(悪企み)を考えているユークリッジ。
裕福な伯母を持ち、罪悪感という観念を持たない真性お坊ちゃまでもある彼に悩まされ、会うたびに手持ち残高をゼロにされながらも、彼から世にも珍奇な物語という最高のおくりものを受け取る主人公。
現在のお金への換算レートが書かれているので、ユークリッジが平気で搾取していく金額の意外な多さは読者の心臓にも悪いけれど・・・
いつの間にか彼のペースにはめられて、次の冒険譚を楽しみにしてしまいます。
無一文になるたび、あなたの家に転がり込んで執事を手なずけ、「貴公は真の友人であるなあ」とうそぶきつつ、あなたの一番上等な服を拝借しては次なるビジネス展開を狙う、世にも迷惑で心臓に悪い最高の悪友との、青春時代のひととき・・・異色の短編集ですが、執事や伯爵を主人公にしたシリーズと、のびのびとして時に人を食ったような人間性賛歌の英国ユーモアが通じていて、さわやかな読後感です。